対談スポンサーシップと街づくり スポーツ起点のインフラ整備へ

荒谷建設コンサルタント 社長 / 荒谷 悦嗣
ヴィクトワール広島 GM兼社長 / 中山 卓士

広島プロスポーツ特集|広島経済レポート

国内3位の強豪へと成長した自転車プロロードレースチームのヴィクトワール広島と、道路・橋梁設計などの荒谷建設コンサルタント(中区)が今シーズンからスポンサー契約を結んだ。地場企業がスポーツチームに協賛する意義はどこにあるのか。共創で自転車インフラ整備という社会課題解決を狙う2社長に背景と展望を聞いた。

―スポンサー参画の決め手は。

荒谷 近年、シェアサイクルで広島市内を走ることがある。その中で道路の構造や整備に改善の余地を感じるようになった。かつてドイツのライプツィヒを訪れた際、歩道と自転車道が明確に分離され、駅構内や電車内にもそのまま自転車を持ち込めることに衝撃を受けた。ニューヨークでは、車道1本をそのまま自転車道に転換し、大渋滞を招きながらも市民がそれを受け入れている様子を目の当たりにした。そうした経験がある中で、経済同友会の席で中山社長と出会い、昨夏のレースに招待された。観戦を通じ、道路整備の専門家として一緒に動ける確信を得て参画を決めた。

中山 荒谷社長のご体験を聞き、思いが完全に噛み合ったと感じた。当社が描く街づくりの青写真を共有できるパートナーを得られたという思いだ。わがチームの選手は1人年間約3万6000㌔を走り、路面の凹凸や整備不備を体で熟知している。その集積した実体験に荒谷さんの専門性や実績を掛け合わせれば、国や自治体への働きかけに格段の説得力が生まれ、議論の質が全く変わる。現在は両社で月1回のミーティングを重ねている。

―スポーツチーム協賛の意図は。

荒谷 当社は広告宣伝で受注が増える業種ではなく、重視するのは採用向け認知獲得と社員エンゲージメント向上の2点だ。以前、若者へのアピールを狙い年末年始にテレビCMを80回流したことがあるが、ターゲット層にはほとんど届かなかった。スポーツチームであれば、試合会場やSNSでのユニホーム露出が直接届くと考えた。また地元チームを応援することで、社員が誇りを持てる会社づくりにもつながる。

中山 商談獲得ではない理由で賛同していただけることが心強い。「街づくりの応援」という大義名分は、新たなスポンサー候補への説明がしやすくなる。協賛社自身が自信を持って語れる理由を持てることが、長期的な関係を築く上で重要だ。

―他スポンサーの参画理由は。

中山 純粋に競技やチームを応援したいという方も多いが、自転車という独自性に魅力を感じてくれている方もいる。他競技とは違い、自治体のスポーツ課に加えて観光、道路課を同じ会議に集められる。縦割り組織に横串を刺し、幅広い部門を巻き込んでアクションを起こせる。また、地域の小中学校を中心とする安全教室の実施などCSR要素が多いことも影響している。

荒谷 当社はサンフレッチェ広島のスポンサーでもあるが、それもスタジアム周辺整備など街づくりがきっかけだった。地域貢献は社内でも共感や理解を得やすい。

―逆に、スポンサー離反の要因は。

中山 大きく三つある。一つ目は、立ち上げ支援の名目で参画したケース。これは比較的ポジティブな離脱で、巣立ちのような認識。二つ目は財務状況の変化。三つ目は担当者交代による見直し。特に三つ目は、後任に引き継ぐ際に納得できる理由をつくり続けることが離脱防止の本質だ。

―スケールを目指す他の競技チームへのアドバイスは。

中山 課題はやはり「応援する理由」の設計だ。勝利だけを前面に出すと、勝てない時期にスポンサーを失う。地域貢献の意義を言語化し、資料に落とすことが先決。例えばブラインドサッカーなら福祉への賛同、女子競技なら女性活躍への共感といったそれぞれの文脈があるだろう。

―日本の自転車インフラの課題は。

中山 法令・設計標準の整備不足が構造的な問題だ。グレーチングの整備不良や逆さ取り付けで、タイヤがはまり重大事故につながるケースは全国的に後を絶たない。同じリーグの宇都宮ブリッツェンが地元に働きかけ街づくりが変わった事例がある。国交省や自治体の道路交通局と連携し、広島モデルを育てたい。

荒谷 法整備から変えないと本当の整備は進まない。ノウハウを持つ我々が組む意味がそこにある。

―広島での大型レースの展望は。

中山 現在は2日間の予算が計2000万円規模の大会を運営。平和公園・原爆ドーム周辺でのクリテリウムはチーム創設から10年来の構想だ。概算では8000万~1億円規模が必要になる。「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」は年数億円の予算で1日最大十数万人を集める。財界を巻き込む仕掛けが鍵で、広島でも大規模大会に向けて働きかけを進めている。

荒谷 そういう仕掛けができれば、道路整備のノウハウを持つ我々にとっても出番がある。地域インフラとスポーツが連動する広島ならではのモデルになると期待している。

―将来像を聞かせてください。

中山 競技では、3月28日に三原市、29日に西区商工センターでホーム戦を開く。昨シーズンはエースの孫崎大樹がクリテリウムリーグ年間個人優勝、チームランキングは3位だった。今季は日本一を達成し、広島の皆さんに認めてもらいたい。その根底には、強く愛されるチームとして影響力を高め、スポンサー価値も押し上げたいという思いがある。我々は広島経済が盛り上がらないと生き残れない。微力ながら地場企業の支えにもなれる存在を目指す。長期的には、名高い国際大会に出られるような事業規模にしたい。

荒谷 まずは日本一に期待。知名度とプレゼンスが上がれば、事業をさらに加速できる。家族でのサイクリングが当たり前になるように、しまなみ海道や県央を含む広域自転車インフラ網を構築したい。

プロフィールヴィクトワール広島 GM兼社長 中山 卓士 1989年3月23日生まれ、埼玉県出身。選手時代に2009年全日本選手権U23準優勝、12年LeBizet(ベルギー)5位入賞など。15年にヴィクトワール広島を設立。荒谷建設コンサルタント 社長 荒谷 悦嗣 1975年10月15日生まれ、広島市出身。慶應義塾大学卒業後、東京の民間シンクタンク勤務を経て2007年に入社。08年取締役、10年常務取締役、16年から現職。

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