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【特集】組織強化若い選手の信頼獲得へ 自分をさらけ出していく
広島東洋カープ 三軍統括コーチ兼大野寮長
畝 龍実

広島東洋カープ / 畝 龍実 三軍統括コーチ兼大野寮長
未来を担う若ゴイたちが暮らす廿日市市の大野寮。初めて親元を離れて生活する新人選手や、海外からの練習生など顔ぶれは幅広い。コーチ兼任の新寮長として、どのように選手たちと関わるのか語ってもらった。
ー1月1日付で大野寮長に就任されました。昨年に75歳を迎えた前任の道原裕幸さん(元選手・コーチ)から役目を引き継ぎました。2020年から所属する3軍は1、2軍と異なり、試合のために球場へ行くことが少ないので、普段は寮に併設されている練習場で指導に当たっています。道原さんのことも以前からよく見ていましたね。
ー先にコーチ業について伺います。3軍にはどのような選手が在籍しているのでしょう。大きく分けると三つです。まずはけがのリハビリをする選手。二つ目は高卒ルーキーなど、基礎体力の強化が必要な選手。もう一つは例えば投球フォームに課題があるといった「矯正」を行う選手です。私はこの、投手の矯正を主に担当しています。
ー矯正というのは指導者が選手に命じるものなのでしょうか。そうですね。投手は仮に自分のフォームに違和感があったとしても、試合で投げてアピールしたいと思うのが普通です。なので矯正のために3軍に送られたピッチャーは投げ方だけでなく、精神面でのフォローも必要になってきます。
ーそうした選手との接し方で心掛けていることは。一番大切なのは自信を持たせることです。順序で言えば、まずは技術的な課題をどう解決していくかに時間を割き、それが成果となって表れた際にはうまく褒めるようにしています。3軍に来た本人は不本意かもしれませんが、チームとしては戦力として期待しているから矯正をするわけです。「ここでしっかりレベルアップして上に戻ればいいじゃないか」など、前向きな言葉を掛けるようにしています。
ただ、もちろん選手には褒められて伸びるタイプもいれば、必要以上の声掛けは不要な選手もいます。私は頻繁にフィードバックをしたい性格なので、ある投手から「集中したいのでやめてもらえますか」と言われたことがありましたね(笑)。一人一人のタイプに合わせたコミュニケーションが重要だと、改めて気付かされました。
ー現在「Z世代」と呼ばれる年齢の選手を指導する中で、以前からの変化を感じることはありますか。指導する側と受ける側、双方にとって得られる情報の量が圧倒的に増えました。チームでも最新機器でフォームや球質のデータを分析していますが、今はインターネットなどでさまざまなピッチング理論に触れられます。選手には便利な面も多い一方、何を信じたら良いのか分からなくなるケースもあるはずです。今年からは寮長としてグラウンド外で選手と関わる時間が増えるので、彼らが迷った際に信頼してもらえるよう、私という人間をさらけ出していけたらと考えています。
大野寮のキャプテンを任命 ー寮長という立場で、若い選手にどういった指導をされますか。
今年の新人が入寮した1月7日には、社会人としての基礎を徹底しなさいと話しました。具体的にはまず、あいさつ。そして重要なのは時間を守ることですね。練習開始やプレーボールの時間は決まっていますから、そのために何をする必要があるかを考え、逆算して動けるようにならないと野球に集中できません。体のケアもそうですし、商売道具であるグラブやスパイクの手入れといった準備は非常に大切です。
ー〝畝流〟で始めた取り組みはありますか。キャプテンと3人の副キャプテンを任命しました。寮長とはいえ、私の目が届かない部分は必ずあると思うので、約30人いる寮生の中で年齢やキャリアの長い選手に目を光らせてもらう狙いです。4人体制にしたのは、寮生は1軍に昇格すると大野寮にいなくなる(1軍寮に移る)からです。
ー大野寮には、カープがアカデミーを置くドミニカ共和国からの練習生も暮らしていますよね。通訳は付いているのですが、どうしても言葉の壁を感じることはあるので、身ぶり手ぶりで説明したり、分かりやすい冗談を言ったりしてコミュニケーションを図っています。彼らが冗談で返してくれることも増えてきたので、関係性を築けてきたのかなと感じますね。

体が強く、けがをしないことですね。けがを防ぐためには、先ほど述べた体のケアなどの準備が必要になります。昨年までは主に日中に指導するコーチという立場でしたが、今年からは寮で夜間の自主練習に付き合うことも増えると思います。技術面だけでなく、空き時間の過ごし方といった面も含めてアドバイスしていきたい。
ー最後に、新しい立場での目標を教えてください。チームの最終目標は当然、優勝です。そのためには2軍、3軍を含めた全体的な戦力の層の厚さが求められます。寮に住む2軍選手の成長の手助けや、リハビリや矯正に励む3軍選手が少しでも早く試合に戻れるようなサポートを行い、1軍での活躍につなげていきたいですね。
プロフィール広島東洋カープ 三軍統括コーチ兼大野寮長 畝 龍実1964年6月21日生まれ、広島県出身。88年ドラフト3位でカープ入団。92年の引退後はスコアラー、投手コーチを歴任し、2020年から三軍コーチ。25年に兼任で大野寮長に就いた。