【特集】組織強化ビッグクラブ入りへ 結果と数字にこだわる

サンフレッチェ広島 社長

久保 雅義
広島のプロスポーツを応援!!【カープ&サンフレッチェ特集】|広島経済レポート

サンフレッチェ広島 久保 雅義 社長

サンフレッチェ広島の新社長に1月1日付で就いた。新スタジアム初年度だった2025年1月期は過去最高の売上高を見込むなど、クラブは大きく飛躍した。真価が問われる2年目以降をどのようにけん引していくのか。意気込みや思いを聞いた。

―新社長としての決意や思いを教えてください。

名門「東洋工業サッカー部」の血を引く当クラブは、1992年のJリーグ発足時に加盟した「オリジナル10」(現浦和レッズや鹿島アントラーズなど初年度参入10クラブ)の一角として今年33年目を迎えます。先人たちが積み重ねてきた伝統や誇りを受け継ぐ大きな責任と、やりがいを感じています。
地方の一クラブなので潤沢な資金があるわけではない。そうした中で発足当初から特に力を入れてきたのがアカデミー(育成の下部組織)です。〝日本一の「育成・普及型」クラブ〟を掲げ、サッカーの技術だけでなく、人間性を磨くことに重きを置いています。この考えは今後もブレずに続けていきますし、さらに昇華させて次の世代に受け継いでいくことが重要だと考えます。

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―新スタジアム元年をどう振り返りますか。

昨年2月開業のエディオンピースウイング広島でのリーグ戦チケットはほぼ毎試合完売し、延べ48万人以上を動員しました。市中心部から遠い旧スタジアム(現ホットスタッフフィールド広島、安佐南区大塚西)時代にはなかなか来られなかった方にも足を運んでいただいた。客席からピッチまで約8㍍という選手との距離の近さだけでなく、音が反響しやすい構造もあって声援の大きさや試合の迫力・臨場感といった非日常体験を味わっていただけたと自負しています。

これまでのスタジアムでは難しかった光と音響を駆使した演出も奏功。特に夏場の夜のリーグ戦計8試合で開催したファン参加型イベント「超熱狂ナイトフェス」(=写真=)は、想定以上の盛り上がりでした。建設前に視察した米・メジャーリーグサッカーで行われるようなエンターテインメント性の高い演出は日本でも受け入れられると考えていました。ファンの皆さんとより強いつながりを築けたことに大きな達成感があります。熱い声援が選手を後押しし、最後まで優勝争い(最終2位)ができました。今後もこうした取り組みを加速させたい。

そして何よりうれしかったのが、今まで以上に市民の目が私たちに向いてきたこと。スタジアム近くの西区横川エリアの商店街や地域住民のサポートは大変心強いですし、試合のある日に本通商店街など市中心部が紫のユニホームを着たファンでにぎわう様子は「まちなかスタジアム」で実現した夢の一つ。以前はカープの話題が多かったタクシー運転手とのやり取りもサッカーネタがだいぶ増えましたね(笑)。

「初年度の真新しさ」だけで終わらせないためにも、この2~3年の取り組みが非常に重要になります。3月開業の広島城三の丸など周辺施設や、カープをはじめとする地元プロチームとも連携しながら、常に新しいことにチャレンジしたい。

名実ともに「ビッグクラブ」へ ―2030年に売上高100億円を目指しています。

チケットや広告収入、グッズ販売が伸び、24年度の売上高は前期比1・8倍超で過去最高の約78億円を見込んでいます。これはJ1の20クラブのトップ5に入る規模です。名実ともに「ビッグクラブ」になるためにも、さらに結果と数字にこだわります。育成やアカデミーに力を入れることはもちろん、今オフはこれまで以上に積極的な補強をしました。選手間の競争を促しながら、リーグ戦で常に優勝を狙える強いチームをつくります。

スキッベ監督も重要視するアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)にも力を注ぎます。優勝賞金はACL2が約5億円で、上の階級ACLエリートが約18億円。その先のクラブワールドカップは出場するだけで20~30億円を獲得できます。

女子チーム「レジーナ」もまだまだ伸び代がある。昨年末にWEリーグのクラシエ・カップで2連覇した勢いを追い風に、ホーム観客動員数平均5000人の目標達成に向けて、さまざまな企画を打っていきます。

スタジアムの会議室貸し出しや時間貸し駐車場などの「施設収入」も欠かせません。芝の張り替えのタイミングでコンサートなど大型イベントができれば面白い。こうした「試合のない日」の利用もしっかりと伸ばしたいですね。

―売り上げ以外に、ビッグクラブとして成熟するためには何が必要だと考えますか。

強いチームづくりと同じくらい、フロント(営業や広報など経営部門)を強くすることが重要だと考えます。社員たちが誇りを持ち、働きがいを感じられる環境整備に一層努めていきます。
さらに、若い世代がもっとチャレンジしたいと思える社風にしたいです。今は時代の流れがとても早い。感性の豊かな彼らが高くアンテナを張ってさまざまな情報をつかみ、それをクラブやファンサービスにフィードバックできる体制づくりが重要になる。こうした積み重ねが組織を強くすると考えます。

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―これまでのサンフレ人生を振り返り、印象に残る仕事はありますか。

前職は事務用品小売りのオフィス・デポの日本法人に10年ほど勤めました。営業経験を生かし、12年のサンフレッチェ入社時はスポンサーの新規開拓を担当。地元紙などを見て営業に回りました。実は私の第1号受注は、広島経済レポートの記事がきっかけ(笑)。「県内大手学習塾の田中学習会が業績好調」とあり、アプローチ。「人間育成を大切にする」という理念がマッチしたこともあり、長く良好な関係を築かせていただいています。

企画広報時代は旧スタジアムでのホーム戦のイベント立案も経験。限られた予算の中でファンに喜んでもらうためにあれこれ工夫する日々でした。例えば、夏場の試合前に流しそうめん(=写真=)を企画した際は、ホームセンターでそうめん機や材料を買って組み立てたり、手作りのビアガーデンを設けたことも。こうした経験は今後の運営にも新しい形で生かしていきたいですね。

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心眼に映像を描け ―モットーを教えてください。

祖父(現エディオン創業者の久保道正氏)が常に口にしていた「心眼に映像を描け」という言葉を大切にしています。強く思い続けていれば成し遂げられる、心の目でその思いを描けという強いメッセージです。
当クラブは「サッカー事業を通じて、夢と感動を共有し、地域に貢献します」という理念を掲げています。目先の勝利を目指す「チームづくり」だけでなく、この理念に沿った中長期的な「組織づくり」が重要で、強い信念を持って成し遂げたい。

―経営の目標や展望は。

サッカー王国を支えてきた先人の思いが詰まっているクラブ。昨年の新スタジアム開業は一つのターニングポイントでした。こうしたタイミングで社長に就いた立場として、真価が問われるこの2~3年でさらに大きく、強くなるために全力を注ぎます。より一層、広島の街に根付き、つながり、地域から愛されるクラブに育てていきます。

プロフィール サンフレッチェ広島 社長 久保 雅義1972年12月27日生まれ、東区出身。米大手事務用品小売のオフィス・デポ日本法人を経て、2012年サンフレッチェ広島入社。企画広報部長や営業部長、取締役副社長などを経て1月1日付で社長就任。久保允誉会長の長男に当たる。

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