広島電鉄
新駅ビルの開業後、広島の玄関口がにぎわう。路面電車が駅ビル2階に乗り入れるようになった昨年8月、市中心市街地の消費額は前年同月と比べ24%も増加した(日本政投銀中国支店の調査)。
狙い通り、にぎわいは紙屋町や八丁堀エリアにも波及。活力を運ぶ動脈の役割も果たしているのだろう。路面電車が走る風景はどこか、懐かしい。旅先の街でもそう思うことがある。
広島電鉄の2026年3月期連結決算は、駅前大橋ルートによる乗客増や全般的な観光需要の回復、運賃改定、不動産事業の伸びを受け、5期連続増の営業収益374億円を計上。3年前に比べて100億円を積み上げた。純利益は11億円。コロナ禍で落ち込んだものの、Ⅴ字回復につなげた。仮井康裕社長は、
「昨年の9月以降、路面電車の乗客数は落ち着くと思ったが、その後も伸びており、ありがたい。これからも電停のバリアフリー化や電車優先信号の拡充、運行制御の高度化などを進める。中心部で区間が短い電停の統廃合といった見直しも検討したい。安全性と快適性を高め、いっそう選ばれる交通機関へ進化させていく」
電車を直接、駅ビルに乗り入れるプロジェクトは10年以上を費やした。いままた、新プロジェクトが動き出す。西観音町(西区)から白神社前交差点(中区)まで、平和大通り上に1・8㌔にわたる新路線を整備し、宇品線へ接続する構想だ。西広島駅(西区)から西観音町電停までは既存線路を活用。
「既存路線の一部の電停で、待機スペースの狭さが長年の課題となっている。平和大通りルートが実現すれば、電停の統廃合や再配置の価値を高めてくれる。ワクワクする広島を創造していくためにも、関係機関との協議や調整を進めたい」
安全性や利便性の向上はむろんのこと、中心部への所要時間短縮にもつながる。平和大通りを東西移動の新たな主軸に活用する構想に、被爆100年を見据えた街づくりを重ね、レールの先に広島の姿を描く。
大規模な投資を続けるには強い財務基盤が欠かせない。前3カ年経営計画で、収益力の向上と財務改善を同時に進めた。営業収益や利益をはじめ、収益力の指標EBITDA(営業利益+減価償却費)に対する有利子負債倍率など全ての財務目標を達成。前期決算発表の席で、コロナ禍の苦境を乗り越え駅前大橋ルートという大型投資を進めながら財務体質を強化したという達成感もうかがえた。今年度から希望を詰め込んだ、新たな3カ年計画が走り出す。
着地点の29年3月期に営業収益450億円、純利益20億円、ROE(自己資本利益率)4・5%の数値目標を掲げている。
25年の来島者が2年連続で過去最多を更新した宮島でも設備投資を進め、観光クルーザー導入などを予定。買収したA&C(廿日市市)の宿泊事業と連携し、移動と体験を組み合わせた新たな価値づくりをもくろむ。不動産分野で収益物件の取得を進め、都市開発にも力を入れる。
だが、根幹の運輸事業は燃料高騰などを受け、運行補助金を含めても赤字が続く。
「運輸事業だけで採算が取れる〝自立できる企業〟にならなければいけない」
街のにぎわい、観光振興、市民生活を包む、力強い走りを期待したい。

