燃焼してもCO2を出さず、次世代エネルギーとして注目される水素に関連した技術、事業開発に挑戦する県内事業者が増えている。常石グループが水素エンジンの開発拠点を新設したほか、戸田工業は高効率の水素製造システムの開発を進める。工業炉やショベルカーの燃料として使う例もある。インフラ事業者も活用を模索する。
政府は2050年のカーボンニュートラル実現を掲げ、10月23日に社会実装を推し進めるための「水素社会推進法」を施行。普及に向けた課題となるサプライチェーンの整備や既存燃料との価格差を埋める助成金などが予定されている。
世界の水素(水素からつくるアンモニアなどを含む)需要量は50年に22年の約5倍に伸長すると予想される。各国が生産事業者に向けた補助金などで投資を促しており、先行した技術開発は世界を相手にしたビジネスにつながる可能性もある。
事業化をリードする県内企業の取り組みを追った。
エキニシの1号店「EARTORY(アトリ)」に隣接する2号店として2018年に開店した。1号店のコンセプトが「肉・世界ビール」なのに対し、あとり酒店では2軒目での利用も見込んで、魚・日本酒をそろえる。
「これからはカキがおいしい季節。当店は坂町の業者から殻付きを直接仕入れ、生・焼きガキのほかカキポン酢などを提供しています。日本酒は常時、広島の地酒7〜10種と県外の12種を用意。好きな銘柄を組み合わせる地酒3種の飲み比べセットは観光客に人気なんですよ」
日本全国や世界をバックパッカーとして巡った経験から、旅の楽しさを広めたいという。エキニシ全体を盛り上げようと23年から、はしご酒イベントを企画。来春の広島駅リニューアルに合わせた仕掛けを検討している。
「当店含め4店舗を同じエリア内で営業しています。広島を訪れる人に楽しんでもらえたり、広島から旅に出る人が情報収集に来てくれるような場所にしたい」
広島大学病院の近くでベビーカステラ専門店を営んでいます。小麦と牛乳ではなく米粉と豆乳を使うのが特徴。味はプレーンや抹茶、アールグレイなどのほか、期間限定品も含め10種前後をそろえています。シーズン中はよく、マツダスタジアムに向かうファンが立ち寄ってくれますし、私も今年は10試合弱を現地観戦しました。先着で新井監督のボブルヘッド人形が配られる日には、店を早めに閉めて球場へ向かったこともありましたね。
一押しは小園海斗選手です。きっかけは彼が地元テレビ局の企画で、お薦めグルメとして当店の名前を挙げてくれたこと。それ以来、店には51番のユニホームを飾っています。小園選手は今季サードとショート、二つのポジションを守りながら全143試合に出場。活躍が認められて11月のプレミア12で侍ジャパン入りしたのはうれしい反面、少し休ませてあげてほしい気持ちもあります。広島でゆっくりする時間があれば、また店に来てくれるかもしれませんから。
これまで球場で見た試合で最も印象的なのは2017年7月7日、神宮球場の「七夕の奇跡」です。5点ビハインドの9回に猛攻で2点差に迫り、なお走者を2人置いて代打・新井さんが逆転3ラン。当時は少々負けていても何とかしてくれそうな雰囲気がありました。今年は打線が湿りがちだったのが残念。試合が速く進むと売り子さんからビールを買える時間が減ってしまうのも悔しい点です。
大リーグを席巻し、世界をうならせたドジャースの大谷翔平選手。次の世代に夢を与え、勇気づけるため国内の約2万校の小学校に約6万個のグラブを寄贈した。
グラブを手にすると、なぜか心が浮き立つ。子どもの頃がよみがえるのだろう。スポーツには感動があり、生涯の友とすれば豊かな時を過ごすことができる。
スポーツ用品を販売する体育社(中区三川町)は、4フロアある本店の約半分を野球用品売り場とし、2022年に全面改装した東広島店はバットの試し打ちコーナーを設けるなど野球専門に大きくかじを切った。特化したことで尾道市など遠方からの来客が増えるなど成果につながっている。大野昌志社長は、
「わが社はどこが強く、どこが弱いのか。大手との激しい競争に打ち勝つ手はないかと考え続けてきた。そうして事業の〝選択と集中〟を進め、業界の荒波を乗り切りたい」
1947年に創業。店舗と学校向けの外商営業を手掛け、2024年7月期の売上高は10億2700万円。10年ほど前に野球用品の売り場を広げた。グラブ、バット、スパイクなどと品目が多く、品質に対するこだわりも強い。特にグラブは守備位置や好みによってミシンの縫い方、中に入れるスポンジを変えるなど細かい調整が必要になる。そのため販売スタッフには豊富な専門知識が求められる。
また高価なグラブは学生が複数を所有できないため、試合前日にヒモが切れたと持ち込まれたら、閉店の間際でも丁寧に対応する。バドミントンは国体出場経験のあるスタッフが助言し、それを目当てに来店する人も多い。特定分野での高い専門性と地域密着で、差別化を徹底している。
店頭でのサッカーやバスケットボール用品の取り扱いはやめ、野球やバドミントンといった特定スポーツに絞り込む。11月は本店1階をウオーキングとランニング用シューズの売り場に刷新。経営資源を集中させる。
「県内で営む3店舗を合わせても、ショッピングモールなどに大型店舗を構える大手には品ぞろえでかなわない。店頭のスポーツの種類を少しずつ減らす一方で、自社の特徴を出せる野球やバドミントンなどは品数や対応の幅を広げた。野球用グラブの品ぞろえは県内トップクラスになった。もちろん品数を減らすのは怖いが、大手にできないことをやるほかに中小に生きる道はない」
メーカーからの仕入れ商品を代理販売するビジネスモデルにも危機感がある。差別化しにくく、ネット通販との競争にもさらされるためだ。
昨年、自社の野球用品ブランド「TB(トライベースボール)」を立ち上げた。第1弾の木製バットはメーカー品と同等の品質を維持しつつ割安価格に設定した。来年はグラブも計画する。
8月には初のM&Aで、ひじ・ひざのサポーターなどを企画・開発するアクト(安佐北区落合)を子会社化した。理学療法士の代表が大手スポーツ用品メーカーやドラッグストア、整形外科など、そうそうたる企業の商品開発を裏方で支える。野球用品も手掛け、プロ選手が使うような製品もある。
「M&Aに反対意見も出たが熟考の末、決断した。いまは自社ブランドを拡充していくタイミング。アクトのノウハウを生かしたオリジナル商品を開発したい」
新たな挑戦が始まった。