IC4DESIGN

「スワロフスキーの絵本を書かないか?」
2024年夏、思いもよらないメールが、デザイン会社のIC4DESIGN(中区小町)に舞い込んだ。発信元は、オーストリアに本社を置く世界的なクリスタルブランド、スワロフスキーの創業家5代目マーカス・ランゲス=スワロフスキー。IC4社のカミガキヒロフミ社長(59)は、疑いつつも詳細を確認していくと、マーカスさん自身が世界30カ国以上で販売するカミガキさんの絵本「迷路探偵ピエール」シリーズのファンだったことが判明。
「スワロフスキーの130周年記念プロジェクトで児童向け絵本を作りたい、その絵を私に描いてほしいというオファーだった。有名な高級ブランドから直々の指名に正直、驚いた。契約書も何もない状態で、制作前にもかかわらず、この仕事に専念するのに十分なお金がどんと振り込まれた。通常の仕事ではありえない。おかげで他の仕事に気を取られず、絵本作りに集中できた」
それから約1年半。今年4月、イタリア・ミラノにあるスワロフスキーの旗艦店で絵本「ザ・クエスト・フォー・ライト」が世界公開された。大型のショーウインドーと店内は、その世界観に合わせた商品展示や装飾によって彩られていた。

マーカスさんから告げられた言葉は「すべてヒロに任せる」という一言。期待を上回るものを作ろうと心に誓ったという。プロ同士で通い合うものがあったのだろう。
「プロがプロを信頼している関係で本当にいい仕事ができると思う。始めから終わりまで任せっきりだった。任せるという言葉は、最高のものを作れという意味だと受け取った。心が躍った」
IC4は創業以来、ニューヨーク・タイムズ・マガジンや国連機関など海外案件を数多く手掛ける。その中でも今回は最大規模。スワロフスキーの歴史や哲学を徹底的に調べて反映させ、経験のない新しい塗り方にも挑戦。発注者の期待、想像をしのぐ作品作りに懸けた。できる限りを尽くす。プロの誇りがふつふつと湧いた。
プロの矜持
完成した絵本は約40ページ。光と闇の戦いを描いた物語でスワロフスキーの故郷を出発し、世界各地を巡る。カミガキさんが得意とする精緻なディテールと豊かな色彩にあふれており、美しいオブジェやジュエリーなどを優しく描いた。
信頼・愛・勇気・創造という四つの偉大なクリスタルを探して読み進める、探し絵の要素も加えた。
4月のミラノでのお披露目の場には、カミガキさんを含むIC4のスタッフ4人が招待され、現地イベントにも登壇した。
「まさに夢のようだった。最初は、私のイラストとスワロフスキーの世界観があまりに異なると思ったが、結果的に私の描いた絵本がクリスタルのキャラクターたちにストーリーテリング(物語性)を与えることになった。この物語が浸透し、スワロフスキーのさらなる発展につながれば、これほど誇らしく、うれしいことはない」

絵本「ピエール」シリーズは4作まで発売し世界累計販売数は100万部を超えた。英国の出版社とは第6作まで契約を結ぶ。もっか第5作の締め切りに向け、ひたすらペンを走らせる。

