広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2023年11月30日号
トラックが動かない

何とかなると高をくくり、もし間に合わなかったら大ごとである。深刻化する人手不足に加え、働き方改革関連法で猶予期間のあったトラック運送や公共交通、建設、医業などで、来年4月から時間外労働の上限規制が始まる。
 近年はアマゾンなど通販を利用する人が多いためか、物が届かなくなるかもしれないと危機感が広がり、国は物流の2024年問題対策に乗り出した。
 スムーズな配送網を維持するためには、荷主を巻き込んだ業務効率化や適正運賃の交渉、労働環境の改善を通じた運転手の確保などが不可欠となる。国は7月に「トラックGメン」制度を始め、中国運輸局では職員13人を任命。ヒアリングを通じて、適正な取引をさまたげる疑いのある荷主や元請事業者に対して是正を働き掛け、改善計画を定めてもらう。
 現在、4社に恒常的な長時間荷待ちの解消などを求めている。月間約100件をパトロールし、11月22日現在で478カ所を巡った。運送事業者が荷主に対して要望しづらい、運賃適正化の必要性などを伝える。自動車交通部貨物課の田中幸久課長は、
「4回のオンライン説明会に計400人近くが参加し直近は荷主も100人が聴講。既に改善策に着手した先もあり、危機感が浸透してきた」
 トラック運送は労働時間の長さが敬遠され、有効求人倍率が全産業平均の約2倍と慢性的な労働力不足が続く。働きやすい環境を整え、賃上げに踏み切るために収支を改善したいが、燃料高騰で経営環境は厳しい。運賃交渉は同業他社に乗り換えられるリスクを伴い、気をもむ。同局は、中国経済連合会に適正な運賃と取引の協力要請を続けており、4月に中国経済産業局、広島労働局と局長3人の合同で要望を出した。中国運輸局の益田浩局長は、
「燃料高騰に応じた運賃設定を再考してもらいたい。運転手は積み下ろしの前に数時間待たされることが多い。荷主とは運命共同体。物流を弱体化してはいけない」
 荷主の自発的な取り組みを促そうと、19年からホワイト物流推進運動を呼び掛けている。県内では11月22日現在でマツダやイズミなど大手6社をはじめ、運送含む計38社が賛同する。例えばマツダは燃料高騰に応じた割増料金「サーチャージ制度」を導入したほか、効率的な部品積載を推進することで、運送委託先の運転手の無駄な業務の削減につなげた。サプライヤーにも事例を共有し、協力を求めている。
 マツダ系列の広島ロータリー輸送は荷役作業を分離し、運転手が配送に専念できる環境を整えた。GPSを使うクラウド型運行管理システムでリアルタイムに車両の状況を把握し荷待ち時間を削減。22年の1人当たりの年間残業時間は422時間で、19年に比べて107時間減った。同社は、広島労働局の「ベストプラクティス企業」に認定。
 労働局の釜石英雄局長は「モデルケースとして県内企業に情報発信する」と期待を込める。さっそく11月15日に広島運輸支局の鬼村栄支局長と共に、両社とマツダロジスティクスを交えて意見交換した。鬼村支局長は、
「運転手になりたい若者が減り、高年齢化している。トラックがあっても物を運べない状況になりかねない」
 産業や人の暮らしを支える物流改革は待ったなし。手遅れは許されない。

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