広島経済レポートの記者が注目する旬の話題をコラムで紹介。
確かにチョコレートのような風味があるのに、カカオは一切使っていない。食品製造のあじかん(西区商工センター)はチョコレートに含まれる10種類の香り成分のうち、焙煎ゴボウに8種類もの共通成分があることを発見。その研究を生かし、昨年夏にゴボウを原料とするチョコレート風のスイーツ「ゴボーチェ」を発売した。
カフェインを含まず食物繊維が豊富で、ジャパン・フード・セレクション(2024年7月)グランプリを獲得。昨年12月には全国放送のニュース番組でも取り上げられた。いま品薄状態という。足利直純社長(56)は、
「この商品は業務上の失敗作から生まれた。ここ数年、みんなに〝前向きな失敗〟を促し、失敗を恐れて挑戦をためらう雰囲気を払拭することから始めた」
植物由来の原材料だけを使うバター代用脂を開発中に思いがけずゴボウとチョコレートの香りの共通点を発見。まさかの新商品につながった。
「3年前の社員アンケートで(当社には)失敗できない雰囲気があると指摘された。これはいけないと思った。準備不足や怠慢による失敗は許されないが、何か新しいものを生み出そうと意欲的に挑戦した結果、それが失敗しようと容認されなければならない。すぐに社長朝礼で、前向きな失敗を歓迎すると全社員にメッセージを送った」
米ハーバード大学の研究者ショーン・エイカー氏の著書「幸福優位7つの法則」(徳間書店)から示唆を受けた。成功したら幸福になるのではなく、幸福であることが成功につながることを多くの研究から解き明かす。職場の幸福感や楽観主義が業績を高め、失敗へのプレッシャーを抱えた組織と比べて、成果に差が出るという。わが社はどうだろうか。さまざまな試行錯誤を重ねてきた。
「もともと部門間のセクショナリズムが強く、4〜5年前から配置転換によって部門の垣根を超えた組織再編を進めてきた。少しずつ開発や営業などが互いの気持ちを分かるようになり、風通しが良くなった。社風こそ、企業の活力を促す大きな原動力ではなかろうか。優れた商品はさらに優れた競合品の出現で消え去る。しかし社風はいつまでも独自性を発揮し続ける。一人一人が自ら考え、行動する組織を目指している」
楽観主義だから小さなチャンスも見逃さない、ワクワク感があるのだろう。約400種類ある卵製品の一つ「まどか」は、スクランブルエッグを作る過程で、たまたまクルクルと回って筒状になったものを商品化。拡販商品に育った。昨年11月発売のペットボトルタイプの焙煎ゴボウ茶は開発に14年の歳月をかけた。一般的にペットボトルのお茶には酸化防止のビタミンCを微量加えるが、どうしても風味に影響が出る。粘り強く開発を続け、ようやく満足できる商品に仕上がった。滑り出しは好調という。
「主体性があれば職場から指示が無くなる。指示された仕事には気持ちがこもらない。しっかりと背景や狙いを伝え、後は任せる。たとえ、うまくいかなくても、みんなで解決策を考えることが発展につながり共感を生む。楽しい仕事こそ一番の目的です」
前3月期連結売上高は初めて大台の500億円を突破。今期は520億円を見込む。巻きずしの魅力を発信する「巻MAKI課」の設置など新たな挑戦も始めている。
トランプ大統領は「連邦政府による全ての検閲停止」とする大統領令を出した。バイデン前政権が誤情報などで社会を混乱させるソーシャルメディア批判を強めたことに反発し、トランプ大統領は「言論の自由」を侵害するとし、大統領令でひっくり返した。
大統領就任式にイーロン・マスク氏らプラットフォームのトップがずらり居並んだ。近年、米政権が交代の都度に大きく政策転換。日本ではソーシャルメディアを利用した犯罪事件が多発し、選挙で真意不明の情報拡散により投票行動に影響を与えた。これから新聞やテレビと、ソーシャルメディアとの関係、在り方がどう変遷していくだろうか。
フジテレビが大揺れに揺れている。報道機関としての姿勢が鋭く批判を浴びた。一方で新聞界は依然と発行部数減に歯止めがかからない。地域のマスコミを引っ張ってきた中国新聞社(中区)の岡畠鉄也社長は、
「こんな時代だからこそ、事実をしっかりと伝える、地域で最も信頼される情報源であり続けようと、改めて社員に宣言し、奮起を促した」
ニュースアプリなどの利用者は増え続けているが、全国の新聞発行部数は10年前に比べて4割も減った。中国新聞の朝刊発行部数は46万3000部(2024年12月)。部数減をこのまま放置しておく訳にはいかない。新たな挑戦を開始している。昨年夏立ち上げた読者モニター制度「たるトモ」は編集局が主体となり、登録モニターにアンケート調査やインタビューを継続的に実施。非購読者を含む約2000人の率直な意見に耳を傾ける。2月1日付の役員人事で専務から昇格した井上浩一副社長は、
「新聞をはじめとする各種メディアは、読者や視聴者にこんなニーズがあるだろうという仮説の下で、さまざまな情報を発信してきた。当社でも数年ごとにマーケティング調査を行い、コンテンツづくりに生かしてきた経過がある。しかしソーシャルメディアの台頭で変化が加速し、数年に一度では間に合わない。また正しく検証ができているか、読者の求めるコンテンツは何か。より深く探り、より素早く取材に着手し、調査報道なども展開する。物事の核心に迫るジャーナリズム精神を堅持しつつ、デジタル社会に適応したメディア分野も新たに開発し商品力の向上や有料会員の獲得にもつなげたい」
1月スタートした3カ年経営計画の重点項目に▽メディア事業の再構築、▽新事業・投資による収入創出、▽グループ経営・連携の推進、▽働きやすい組織と人づくり、の四つを打ち出した。昨年リリースしたニュースアプリ「みみみ」、新会員基盤「たるポ」、地域企業と新興企業を結び付ける「TSUNAGU広島」のほか、PFI事業といった従来の新聞経営になかった分野への新規参入に意欲を見せる。
「これまでの計画が助走とすると、今回は再成長に踏み込むフェーズに入る。地域の健全な報道機関であり続けるためにも事業構造の抜本的改革が必要だ。現在のグループ売り上げ686億円を2032年に1000億円に引き上げる数値目標を定めた」
不動産事業へ本格参入するほか、M&Aの推進などを盛り込む。老朽化した現本社ビルは、駐車場などのある本社西側の社有地を候補に移転新築する計画だ。本社ビル跡は立地を生かし、ホテル誘致などで収益化の検討に入る。どう変貌を遂げるだろうか。
就任する前から世界を揺るがせたトランプ大統領がいよいよ動き出した。政治や経済のニュースは瞬時に世界を駆け巡り、遠く広島にどんな影響を及ぼすだろうか。今年で被爆80年。歴史をのぞき、未来を描くとき芸術、スポーツの果たす役割は大きい。
全国のマツダ車ディーラーで最古参の広島マツダは1933年、原爆ドーム近くで創業。被爆で初代の松田宗弥さんをはじめ全社員を失い、社屋も倒壊。翌年には教治さんが2代目に就任し、人の移動はもちろん資材や物資輸送に活躍した自動車の販売を通じて、広島の復興に力を尽くした。みんなの勇気、希望に支えられながら懸命に踏ん張ってきた歴史がある。
未曾有の苦難を乗り越えてきた広島の強さや誇りを伝え続けようと、文化活動や芸術を通じてさまざまな取り組みを進めている。
原爆ドーム近隣でグループ会社が運営する「おりづるタワー」は戦後100周年の2045年に向けた願いを表すため、9層のらせん状スロープの壁をキャンバスに見立てたウォールアートプロジェクトを2022年に開始。戦時中の呉を舞台にした漫画「この世界の片隅に」の作者こうの史代さんら、広島に縁のある9人が1層ずつ描いた。こうした取り組みが評価され、企業メセナ(芸術文化の支援)協議会の「メセナアワード2023」で優秀賞を受けた。
昨年10月には12K超の解像度の湾曲LEDビジョンを備える貸し会議室を新設。幅15×高さ2メートルと長大な画面に臨場感ある映像を流す。室内の柱にもビジョンを張って連動させる。ヒロマツHDの松田哲也会長兼CEOは、
「平和の願いを発信する場として国際的な関連会議に応じていく意気込みを示し、2045フューチャープレゼンテーションルームと名付けた。草木も生えないと言われた被爆直後から世界の想像を超えてたくましく復興した。同タワーのおりづるの壁に投入された折り鶴は100万羽を超え、思いが積み重なる。未来の希望を祈り、平和を願う人々の心に寄り添う施設であり続けたい」
地域への恩返しという言葉に実感がこもる。
昨年11月、アトリエ・ギャラリー「アートボーンヒロシマ」を中区幟町に開設した。新たに取得した8階建てビルにアーティストたちが滞在。創作活動を見学できるようにした。グッズ店とギャラリーも置く。大阪・関西万博ギャラリーで個展を開催予定の武蔵さんが広島をテーマに描いた作品や宮本拓也さんが世界平和を願った作品などがある。
制作者にアトリエとギャラリースペースを無償貸与するほか作品の販売促進などを通じ、創作に打ち込める環境を提供する。12人が参加しており、20人弱に増える予定。
「ウォールアートプロジェクトのメンバーから芸術を発信する機会が少ないといった悩みを聞いた。ここはアートが生まれる場所。制作者の息づかい、思い、熱量なども作品を形づくる一部として、皆が体感できる」
芸術、スポーツに国境は無く多くの人の心を動かす。企業、人の思いを重ね、広島の未来へつなげてほしい。
2025年は、およそ800万人いる団塊の世代(昭和22〜24年生まれ)が全て75歳以上の後期高齢者になる。現役世代の負担が増え、医療や介護の体制維持も一段とひっ迫。40年には独り暮らしの高齢者(65歳以上)は896万人に増加すると予測(総務省)されている。戦後〜高度成長期〜バブル崩壊を駆け抜けた高齢者にとって余生をどう過ごすのか、備えは万全か、不安は尽きない。
広島商工会議所ビル8階に事務所を置く(社)人生安心サポートセンターきらりは、主に独り暮らしの高齢者向けにさまざまなサービスを展開している。入院や施設の世話になる際の保証人引き受けに加え、認知症に備えた財産管理、生前整理、遺言の作成などをトータルサポート。司法書士法人ありがとう代表も兼務する橋口貴志理事長は、
「01年12月に独立して司法書士法人を立ち上げた頃は、前年に成年後見制度が施行されたこともあって高齢者の後見人を引き受けることが非常に多かった。しかも引き受け時には認知症が進行していて既に財産を奪われている例も目にし、元気なうちに相談できる場所が必要と痛感。11年のきらり設立につながった」
延べ会員数は400人を超え、年齢層は45〜98歳と幅広い。会員向けには終活講演会やカープ観戦会、日帰りバスツアー、大学生との花見といった交流イベントを100回以上開催してきた。会員が病を患えば医師の説明を一緒に聞き、手術に立ち会うこともある。独りで不安を抱える高齢者に、しっかりと寄り添う姿勢が頼もしい。
「長年連れ添った配偶者との死別だけでなく最近は離婚、未婚など、独り身となる背景はさまざま。そうした高齢者を狙う詐欺師も増えている。これから訪れる超高齢社会においては、社会全体で孤立を防ぐ仕組みをつくることが大切となる」
新たなプロジェクトが動き出した。来年夏ごろをめどに中区舟入幸町で7階建ての多世代交流施設「きらりビル(仮)」を開設する。4〜7階には賃貸の8室があり、半分の部屋には単身の高齢者が住む。残りのうち2部屋には学生などの若者、もう2部屋はひとり親家庭が入居する構想を描く。3階以下は一般向けに多目的スペースや、地域の子どもたちに開かれた「みんな食堂」を設ける。入居する高齢者には幅広い人とつながる場を提供するほか、食堂の運営に関わってもらうことでやりがい、生きがいを得てほしいと話す。
「料理ができない方であっても、例えばビルの管理や、共に入居するひとり親家庭の親が仕事で遅くなる日に子どもの世話をするなど、できることは必ずある。若い入居者には地域住民に参加してもらえるような催しの企画、実行に期待。かつての日本の村のような、血縁はなくともみんなで協力し合う環境をイメージしている。これが成功すれば今後も同様の施設をどんどん増やしたい。選択肢が増えることで、より多様な暮らし方を会員に提案できる」
入居者が住みやすく、利用者も行きやすい施設とするため、広島大学の建築学や心理学の研究者も協力。きっかけは広大法学部卒の橋口理事長が所属する同窓組織「千田塾」で生まれた縁だったという。同大で客員教授を務めていた佐伯博章さん(地域総合設計代表)が基本計画・設計を担当。やはり地域がつながる力は大きい。
野村乳業(安芸郡府中町)は明治生まれである。1897(明治30)年に初代の野村郁造が現在地に野村牧場を創設し、酪農業を始める。当時は、病人か乳幼児の特別な飲み物で、高価な薬のような感覚で飲用されていたという。
創業から127年。昨年12月、(公社)中小企業研究センター(東京)の第58回グッドカンパニー大賞のイノベーション事業化推進賞(全国2社)を受賞。植物由来の乳酸菌飲料で新たな市場を開拓した取り組みと成果が評価された。世界的に健康管理の意識が高まり、乳酸菌プロバイオティクス(有用な微生物)市場の拡大が見込まれる中、5代目の野村和弘社長は、
「15年前ごろから韓国や米、中、台湾、独、豪などへ120回以上視察し現地の発酵食品を入手して分析、評価を重ねてきた結果、十分に戦っていけると踏んだ。いまは韓国、米、中の食品メーカーに原材料素材として微生物増殖剤を販売するほか、今年はもう一歩踏み込んだ海外取引を計画している」
これまで決して順風満帆ではなかった。ヨーグルトの多様化を経営戦略に掲げ、日本初のプリンヨーグルトを開発。全国展開して市場を広げた。しかし2000年代に入り、牛乳やヨーグルトの価格競争が激化。大手の攻勢にさらされて疲弊し、先々を展望できないピンチに立つ。
この頃から味、品質だけでなく、健康に役立つ〝価値〟を提供する発酵食品の開発を模索するようになった。さまざまな研究機関を訪ね歩く中、広島大学医系科学研究科の杉山政則教授と機能性食品の共同開発を始めた。そして世界初の植物乳酸菌100%で発酵させた固形ヨーグルト開発に成功する。多糖類を含有する植物乳酸菌の整腸作用を立証。自信を持って人に勧められる根拠を得た。杉山教授から提供される植物乳酸菌ラクトバチルスプランタルム SN13Tの働きが価格競争から抜き出る価値を発揮し、11年からは「飲む、植物乳酸菌」マイ・フローラの販売を始め、販路を拡大。生きて腸まで届く植物乳酸菌を爆発的に増殖させる発酵技術(特許)をテコにして、価値や質でニーズを生む唯一無二の商品開発に賭けた。
県内のグッドカンパニー大賞受賞は熊平製作所など24社を数える。全国表彰(現グランプリ)はサタケや西川ゴム工業、モルテン、食品関連ではタカキベーカリーやあじかん、三島食品、オタフクソースが優秀企業賞などを受賞。イノベーション部門は野村乳業が初めて。発想し考え、行動してチャンスをつかんだ。
「腸活が実感できる機能性表示食品マイ・フローラは、数はまだ少ないものの病院やクリニックからの問い合わせも増えている。効果を実感した医師がスタッフにも勧めてくれるほか、患者の食生活から直していきたいという要望も届く。乳業から派生した発酵という技術が当社の命。お腹から健康を育て、喜んでもらう。これを揺るぎない事業推進の原動力に、国際競争も視野に入れていく」
今夏発売を目指し、仕上げに入っている植物乳酸菌飲料は国内自給率の高いコメを原料とする。社員からの発案で独自の植物乳酸菌を使って商品化にこぎ着けた。原料を乳からコメにすることでCO2排出量を削減。農家や消費者に役立つ三方よしのビジネスモデルの可能性を秘めているという。「無いと困る会社にしたい」と夢を描く。
米国第一主義を標ぼうし、各国とディール(取引)を推し進めるとみられるトランプ政権が一体どこまで政策を実行するのか。2025年の世界経済の最大の波乱要因として注意をしておく必要があるという。ひろぎんホールディングスの経済産業調査グループ長の河野晋さんに世界、日本、県経済の新年の見通しなどを聞いた。
「米大統領選でトランプ氏が再選し、上下両院共に共和党が過半数を占める〝トリプルレッド〟となった。通商・外交や移民、財政、環境・エネルギーなど多分野で現行政策からの転換が図られるのではないだろうか。当面は関税引き上げが景気に影響を与えそうです」
トランプの不確定。どんなカードが飛び出すやら世界中がはらはら、ひやひや。手の内が読めないだけにトランプの手のひらの上で踊り、めまいなど起こさないよう確かで力強い日本ならではのカードを切ってもらいたい。
日本の最大の輸出先(23年)は米国(20.3兆円)で、2位の中国(17.8兆円)と合わせて輸出額全体(100.9兆円)の4割近くに達している。米国、中国向けはともに輸送用機器、一般機械、電気機器類の割合が高く、日本への関税引き上げが実施された場合、経済は少なからずマイナスの影響を受けることになりそうだ。
10年代の後半に米中貿易摩擦の激化を背景に日本経済が景気後退局面入りしたように、日本の対米直接輸出に対する影響のみならず、中国への一段と高い関税賦課や輸出規制の強化、世界景気の悪化などに伴う間接的な影響を大きく受ける可能性があると指摘する。
トランプ政権の政策により日本の自動車産業はどんな影響を受けるだろうか。国内の主要自動車メーカーのグローバル販売台数に占める米国販売の割合は、スバルが約7割を占めて突出しているが、トヨタ、ホンダ、日産、マツダも2〜3割を占め、各社とも米国を最重要市場に位置付ける。さらにメキシコへの関税引き上げを表明しており、日本に限らず世界の自動車産業に大きな影響を及ぼすことが懸念される。
米国は広島県の全輸出額の4分の1を超え、うち自動車が約4分の3近くを占めている。メキシコにはマツダのほか多くのサプライヤーも進出している。
関税引き上げがどうなるのか、それによりどんな影響が出るのか、裾野の広い産業だけに広島の経済界にとっても一大関心事といえよう。マツダの底力に期待したい。
さて、広島県の見通しはどうか。最近は輸出や生産に弱めの動きが見られるものの、設備投資が堅調に推移しているほか、個人消費にも持ち直しの動きが広がりつつある。
今後は輸出や生産が上向きに転じるとみられるほか、設備投資が堅調に推移。インバウンドが増加基調を維持する中で、個人消費も所得環境の改善を背景に持ち直しが進むとみられ、全国同様、緩やかな回復基調をたどると予想される。油断はできないが、まずまずのよう。
依然として人手不足は解消されそうにない。生産性向上に向けた投資や賃金などの就労条件の改善が求められる中で、大手と中小の対応格差が広がる可能性には注意が必要という。大都市圏と地方の格差も解決する糸口がなかなか見えてこない。経営者は気迫と知恵で踏ん張るほかない。
元日の能登半島地震に緊張感が走った。師走を迎え、韓国ユン(伊)大統領の非常戒厳宣言に続く大混乱や、シリアのアサド政権崩壊のニュースにも驚かされた。2025年早々、米国のトランプ大統領が待ち構えている。世界、日本にどんなニュースが飛び出してくるだろうか。
スポーツ界は大谷翔平選手をはじめ、明るいニュースがあった。カープの大失速で、3位に浮上した横浜ベイスターズが何と日本一を制覇。三浦監督が感動で顔をゆがめたテレビ中継に見入った。話題はがらりと移るが、22年にディー・エヌ・エー(東京)グループに入り、7月に社長交代したデータホライゾン(西区)の内海良夫会長(77)に話を聞いた。IT事業に懸ける情熱は冷めやらず、生涯を貫く命題なのだろう。
「改めて本丸のデータヘルス関連事業をてこ入れすることが私のなすべき仕事と肚をくくっている。管轄の厚生労働省の担当者らをはじめ国の機関に働き掛けていく」
と決意をにじます。
1972年に広島大学理学部を卒業後、コンピューターの可能性に賭け、起業。82年設立したワイエス企画を現社名に変更した2000年以降は医療分野へ専念していく。健康寿命の延伸と医療費の適正化を使命と定め、医療情報データ分析・活用を武器に、アウトカムを重視したデータヘルスケア関連事業に全力を注いだ。8年後、東証マザーズ上場を果たす。
全国に先駆け、数百万円の医療費がかかると言われる透析治療の患者数を減らした呉市の取り組みに示唆を受け、PDCAに沿った効率的、効果的な保健指導に着眼したビジネスモデルを確立。国策として全国自治体へ広がっていった。
「1年後に1割が透析に至る腎不全(4期)患者を優先的に指導することが、データヘルスの原点で重要なポイント。だが、近年は指導の成果が見えにくい早期腎症期(1・2期)の指導に偏っており原点に戻したい。運動や食事、生活習慣は看護師や保健師、管理栄養士が指導する領域で、医療分野ではないが、医師からの勧奨が不可欠。医師会との連携協力を深めていく」
本来は、保険者に診療報酬を請求するためのレセプト。傷病名や診療行為、服薬などさまざまな医療情報を目的に応じて整理・分析。メンテナンス体制を整えてきた。20年以上をかけデータベースとして蓄積しながら「宝の山(ビッグデータ)」へと変貌させた価値は大きい。現在、主力の市町村国保向けデータヘルス計画作成支援業務は500件以上に及ぶ。その着眼点が、事業化するための専門的な知見と実行力を持った当時の広島大学の森山美知子教授と呉市の中本克州副市長との出会いを引き寄せた。
全ての人に関わる健康。レセプトデータ活用のパイオニアと、プロ野球球団も持つゲームなどを開発するエンターテインメントの強みが化学反応を起こし、さらに元気で長生きできる人生の応援団へ、もうひと踏ん張りしてもらいたい。もう一つ。新たな命題が見えてきたのか、個人で農業参入を構想しており、北海道に広大な耕作地を手当し、新しい種まきを計画する。
「現状の自給率を考えると、これからは農業だと思う。世の中に貢献しない会社はやがて淘汰される。社会貢献こそが会社存続の最大の武器」
着眼し、自ら動く。創業精神はなお健在だ。
せっかく築いてきたスキルやキャリアが途切れると当人はむろん、会社の痛手も大きい。とりわけ人材確保に難儀する中小企業にとって有為な人材が突然、休職や退職すると、たちまち経営の土台さえ揺さぶられる事態になりかねない。思うように働けなくなった本人はなおつらいし、人生そのものが大きく揺らぐことになる。
メンタルヘルスの重要性が叫ばれて久しい。2022年度の国の調査によると仕事や職業生活に「強い不安、悩み、ストレスがある」と感じている労働者は約8割に上るという。ドキリとされた経営者も多いのではないか。業務による心理的負荷が原因になった精神障害に対する労災補償の請求、認定件数は共に増加傾向をたどる。メンタル不調の要因はさまざま。県内約6万事業所・100万人超が加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)広島支部が行ったメンタルヘルスに関する事業所実態調査で「メンタルヘルスと〝睡眠〟との密接な関係」が浮き彫りになった。
21年度の健診受診者27万人弱(35〜74歳)のうち、運動や食事などの生活習慣を改善する必要がある人などの割合を超えて「睡眠で休養が取れていない」と答えた人の割合が全国平均と比較して突出して高い。
疾病別の入院外医療費では「精神及び行動の障害」が全国平均を上回り、女性の方が高い。22年度には健診やレセプト、傷病手当金支給決定データからメンタル系疾患を3階層化し、軽度のメンタル不調予備軍(睡眠で休養が取れず、かつ歩行か身体活動の習慣がない・就寝前の摂食・朝食抜きなど)は、27万人弱中約3人に1人が該当する。
メンタル系疾患による医療機関の受診者と手当金受給者(休職者)を合わせた中・重度は100人に7人。受給資格喪失者(退職)のうちメンタル系疾患は13.5%。どの階層も働き盛りの男女40〜50代の割合が高い傾向が見られた。
睡眠不足でメンタル系疾患を発症するリスクは睡眠で休養が取れている人と比べ1.25倍高い。これに運動不足などが加わると1.29倍に。松原真児支部長は、
「睡眠不足とメンタルとの深い関係が明らかとなった。特に40、50代になると公私共に重い責任がのしかかる。気になって眠りは浅く、疲れのとれないまま翌朝を迎える。負のスパイラルから早急に脱け出さないとリスクはどんどん大きくなる。長時間残業もいとわない猛烈な働き方が当たり前だった一昔から一転。働き方改革に取り組む動きも業種を問わず広がってきたが高齢化で生産労働人口が減り業務量は増える一方。働き方改革との狭間で責任感の強い人ほどストレス度は高い。切り札となるのが健康経営の推進。経営者が健康経営に取り組んでいない事業所では退職リスクが2.8倍となった。大規模事業所は自助努力できるが、産業医が不在の中小には限界がある。メンタル疾患は長期化しやすい。保険者として心の健康に向き合い、予防策も発信する必要を感じている。広島産業保健総合支援センターとの連携を強化し、中小事業所の支援体制を拡充していく」
問診回答を踏まえ、1〜3月に対象者へウェブアンケートを行って生活習慣などの行動分析〜問題提起〜行動変容を促す。1月に開くセミナーで〝予防策〟を伝える。誰しも陥る可能性のあるメンタル不調。揺るがせにできない。
大リーグを席巻し、世界をうならせたドジャースの大谷翔平選手。次の世代に夢を与え、勇気づけるため国内の約2万校の小学校に約6万個のグラブを寄贈した。
グラブを手にすると、なぜか心が浮き立つ。子どもの頃がよみがえるのだろう。スポーツには感動があり、生涯の友とすれば豊かな時を過ごすことができる。
スポーツ用品を販売する体育社(中区三川町)は、4フロアある本店の約半分を野球用品売り場とし、2022年に全面改装した東広島店はバットの試し打ちコーナーを設けるなど野球専門に大きくかじを切った。特化したことで尾道市など遠方からの来客が増えるなど成果につながっている。大野昌志社長は、
「わが社はどこが強く、どこが弱いのか。大手との激しい競争に打ち勝つ手はないかと考え続けてきた。そうして事業の〝選択と集中〟を進め、業界の荒波を乗り切りたい」
1947年に創業。店舗と学校向けの外商営業を手掛け、2024年7月期の売上高は10億2700万円。10年ほど前に野球用品の売り場を広げた。グラブ、バット、スパイクなどと品目が多く、品質に対するこだわりも強い。特にグラブは守備位置や好みによってミシンの縫い方、中に入れるスポンジを変えるなど細かい調整が必要になる。そのため販売スタッフには豊富な専門知識が求められる。
また高価なグラブは学生が複数を所有できないため、試合前日にヒモが切れたと持ち込まれたら、閉店の間際でも丁寧に対応する。バドミントンは国体出場経験のあるスタッフが助言し、それを目当てに来店する人も多い。特定分野での高い専門性と地域密着で、差別化を徹底している。
店頭でのサッカーやバスケットボール用品の取り扱いはやめ、野球やバドミントンといった特定スポーツに絞り込む。11月は本店1階をウオーキングとランニング用シューズの売り場に刷新。経営資源を集中させる。
「県内で営む3店舗を合わせても、ショッピングモールなどに大型店舗を構える大手には品ぞろえでかなわない。店頭のスポーツの種類を少しずつ減らす一方で、自社の特徴を出せる野球やバドミントンなどは品数や対応の幅を広げた。野球用グラブの品ぞろえは県内トップクラスになった。もちろん品数を減らすのは怖いが、大手にできないことをやるほかに中小に生きる道はない」
メーカーからの仕入れ商品を代理販売するビジネスモデルにも危機感がある。差別化しにくく、ネット通販との競争にもさらされるためだ。
昨年、自社の野球用品ブランド「TB(トライベースボール)」を立ち上げた。第1弾の木製バットはメーカー品と同等の品質を維持しつつ割安価格に設定した。来年はグラブも計画する。
8月には初のM&Aで、ひじ・ひざのサポーターなどを企画・開発するアクト(安佐北区落合)を子会社化した。理学療法士の代表が大手スポーツ用品メーカーやドラッグストア、整形外科など、そうそうたる企業の商品開発を裏方で支える。野球用品も手掛け、プロ選手が使うような製品もある。
「M&Aに反対意見も出たが熟考の末、決断した。いまは自社ブランドを拡充していくタイミング。アクトのノウハウを生かしたオリジナル商品を開発したい」
新たな挑戦が始まった。
若い頃から地域開発の仕事に携わりたいと思っていた。鉄道が地域に果たす役割は大きいと考え、JR西日本を志望したという。同グループの中国SC開発(南区松原町)の竹中靖社長(55)は、広島の玄関口が大きく生まれ変わろうとする時を迎え、その中心的な施設となる広島新駅ビル開発プロジェクトの陣頭指揮を執る。
失敗は許されない。期待と不安が突き上げてくる。新駅ビルは2階に路面電車が乗り入れるという、世界でも稀な空間構成となる。何が起こるか、分からない。足がすくむような事態もプラスに受け入れる心構えが求められる。
5月に「ミナモア」と命名された商業施設は〝全館カフェ〟をコンセプトに、来年3月24日開業すると発表された。だが、その後に電車の乗り入れは数カ月遅れることが判明し、来夏にずれ込むことになった。竹中社長は、
「多くの人が行き交い、集うことを勘案すると、乗り入れの遅れは施設運営の助走期間として、むしろ有り難いと前向きに受け止めている」
2019年に駅ビルの建て替えプロジェクトが本格化。間もなくコロナ禍に遭遇し、工事費や資材の高騰、職人不足などさまざまな難題にぶつかった。店舗のリーシングに際して当初、出店に慎重な向きが多く難航したが、開業準備が進むに連れてテナントはほぼ出そろった。希望を抱く186店舗がミナモアを羅針盤とし、船出に備える。
「各テナントのこだわりと個性を尊重しながら全体の調和をどうまとめていけばよいのか綱渡りのような感覚で、ここまでこぎ着けた。SC開発の仕事は00年に大阪ステーション開発へ出向以来ずっと携わってきた。大阪梅田のエストのリニューアルで販促プロモーションを担当した時は往年の渋谷パルコを知る関係者が大勢いた。人の意識を覚醒させ、ひきつける斬新で尖ったデザイン、びっくりするCM。当時、東京の商業施設に憧れがあった。何がこんなにひきつけてやまないのかとモヤモヤしていた」
ある日、兵庫県立美術館の展覧会で、ジャンルや国境を越えて世界的に活躍したデザイナー石岡瑛子の言葉に出会った。20年以上くすぶり続けていたモヤモヤが一気に解消された。パルコの源流がそこにあった。オリジン(根源)だと思えた。〝新しい時代〟の象徴として、パルコのブランドイメージを築いた人のメッセージが刺さった。
▽問題がない人生、問題がないプロジェクト、問題がない創造というのはあり得ない。問題をどうやって解決しようかと考える。その瞬間に想像もできないエネルギーが湧いてくる。
▽不安と期待と自信が錯綜している時間を持たない仕事はダメだと私は思う。
▽瞬発力と集中力と持続力を身につけて知性と品性と感性を磨く。磨いて、磨いて、磨き続ける。あるとき、ふっと深い霧が晴れるように、何かが少しだけ見えてくる。
トップは時に己を鼓舞し、前進させる独自のよりどころが頼みとなる。本質を突いたその言葉にはっとさせられたという。
新駅開発プロジェクトが何を目指したか、深い霧の中から光が差してきた。人に伝えられる言葉、人を動かす言葉を共有できた時、組織は目的を達成できる有機体になる。広島の未来を握る再開発プロジェクトが相次ぐ中、オリジンの共有が鍵となる。
アマゾンなど通販の急速な普及で運送会社の仕事はどんどん増え、人手が足りずにてんてこ舞い。不在時の再配達が頻発し、その日の仕事がいつまでも終わらない。4月にトラック運転手の残業規制が始まった2024年問題の影響から、事態は一層深刻になってきたという。
帝国データバンクの24年度上半期の全国倒産集計によると運輸・通信業は前年同期比14・7%増の249件。同様に残業規制の始まった建設業も深刻で、人手不足が原因となった倒産は両部門が全業種の半数近くを占める。配送網を維持するためには荷主を巻き込んだ業務効率化、運賃と賃金の引き上げ、働く環境の改善などを通じて、運転手の確保が欠かせない。
これを問題視した国土交通省は11月1日、適正な取引をさまたげる疑いのある荷主や元請事業者に是正を働き掛ける調査員「トラック・物流Gメン」を2倍強の約360人に拡充した。中国地方では昨年7月から1133カ所をパトロールし、悪質な34件を指導した。
物流業が生き残るために何が必要か。荷主から選ばれる組織づくりに力を注ぐKUBOXT(クボックス、西区)の久保満社長(65)は、
「住宅資材を運んだ後のパネルつり設置やユニットハウスの組み立てなど、物を運ぶ前後の〝物流プラスアルファ〟を徹底している。働き方改革関連法を受け、やむなく運賃値上げなどをお願いした。不安もあったが荷主からは、社員がしっかりとした会社なので今後も頼む。社員の教育費が運賃に入っていると考えれば納得できる、など多くの言葉を頂戴し感謝に堪えない。社員の頑張りや人柄の良さが当社の営業力に大きく貢献していると実感できた。誇れるものだと自負している。ほぼ全てが直接取引であり、そうして築いてきた長年の信頼関係こそ、全ての商いに通じる原点だと思う」
運転手が休めるよう全拠点に寝室を置く。労働時間を把握するアプリや新型デジタルタコメーター、車両の現在位置や運行状況の管理システムなどを導入した。事故防止を徹底し、社員が高いモチベーションで安全に働ける環境の整備に余念がない。健康経営に取り組み、経済産業省から優良法人に認定された。
「いかに人材を獲得し、やりがいを感じて働いてもらえるか。人事企画部を設けて人的資本経営を進め、社員の成長意欲を掘り起こし、活躍できる人材を育成していく。仕事の幅を広げる機会や学びの場を増やす。例えば、管理者やマネージャーには自分が抱える業務だけではなく、経営者と同じ目線で人材育成に取り組むマネジメント能力を磨いてもらうため、専用の研修をスタート。人材の力を最大限に引き出し、そこまでやってくれるのかと思われるサービスを追求する」
61期を迎えた。売り上げは15〜17億円で堅調に推移する。社会貢献も意識し、拠点を置く岡山市、岐阜県の大野町と協定して被災者へ救援物資を運ぶ緊急車両の燃料供給を担う。施設は避難所として提供する。
創業した両親を立て続けに亡くした。いまも創業者精神「四つの答え」を大事にしている。経営理念の一番目に「社員の幸せの実現」を掲げ、そのために「物事にはすべて基本がある。基本を忘れるな」「世のため、ひとのため」「誠を尽くせ」「みんな仲良く」(切磋琢磨)と心を込める。
米国大統領選でトランプ前大統領が圧勝し、4年ぶりに返り咲く。ジョーカーのように過激な発言で市場経済を翻弄し、為替や株価に影響を与えてきた。2期目も「米国第一主義」を推進する可能性が高いという。円安で潤った日本の輸出企業は内需の取り込みなど足元から見直しを迫られる局面が出てきそうだ。
マツダは前3月期に北米をはじめとする海外で販売台数を伸ばし、売り上げ4兆8277億円、純利益2077億円と共に過去最高を計上。一方、国内はコロナ禍以降に低迷している。2019年度まで20万台以上を売ったが20〜23年度は約15〜17万台と落ち込み、今期も15万台を予想するなど厳しい。
全般に国内の自動車市場はコロナ禍前の水準まで回復しきっていないが、SUV分野は伸び続けている。特に500万円台と600万円台の増加率が大きく、ここに狙いを定めた。
10月に3列シートSUV「CX‐80」を発売。比較的車体の大きな「ラージ商品」というシリーズで、国内ラインアップの最上級に位置付ける。車両価格は旧型よりも60万円ほど高い約390〜710万円に設定。月販目標1400台。毛籠勝弘社長は、
「もともと22年9月発売のCX‐60を国内販売のカンフル剤にする計画だったが、品質トラブルでつまずいた。月販目標2000台に対して今年は600〜900台で推移するなど低調。同じ失敗がないようユーザー、販売店、ジャーナリストなど多方面から意見を聞き、徹底的に問題点をつぶしてきた。発売が延び、国内販売の回復が遅れてしまったが、万全の状態で世に出せて良かった。国産唯一の3列シートSUVで乗り心地、走行性能、意匠のいずれも最高の出来栄えだと自負している。CX‐60にも改善策を生かしており、挽回していく。ラージ商品全体をじっくりと定番品に育てたい」
今期の世界販売は全体で前年比9%増の135万台を計画し、うちラージ商品4車種で20万台をもくろむ。
「ラージ商品は他の車種と比べ2倍の利益率があり、今後の開発費の原資を稼ぐための貴重な手段になる。特にEV専用車種には巨額のコストが予想される。他社との協業を強化する一方、マツダらしい走りを重視した独自のEVを生み出したい。脱炭素に向けてハイブリッド(HV)など多彩な選択肢を用意し、充電インフラやエネルギー事情にかなった車を提供していく」
新型車は車両の骨格などの面でEVを想定しておらず、2.5L直列4気筒ガソリンエンジンのプラグインHV、3.3L直列6気筒ディーゼルエンジンと同マイルドHVの三つ。減速時にエンジンとの接続を切り離すことで、回生エネルギー(タイヤの回転による発電)の無駄をなくすなど工夫を凝らす。
運転手の意識消失などの異常をAIが判断し、警報を出しながら自動で減速停止する機能も搭載。R&D戦略企画本部の栃岡孝宏主査は、
「40年をめどに当社の新車が原因となる死亡事故ゼロを目指す。自ら運転する高齢者は認知症や要介護認定のリスクが低いというデータがある。完全自動運転では同じ結果にならないと思う。当社の自動運転技術は、あくまでも運転する楽しみのサポートがコンセプト。何歳になっても安全安心に自信を持って外出できるよう力を尽くす」
新たな挑戦が始まった。