広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2023年8月24日号
このままで大丈夫か

動態調査の結果によると、今年1月1日時点での日本人人口は前年から80万人以上減り、統計開始以降で最悪になった。全都道府県でマイナスとなるのも史上初という。
 全体的なパイ縮小に加え、広島県は2年連続して県外への転出者が県内転入を上回る「転出超過」で全国ワースト1位。このままでは若者が減り、産業が衰退していく危機感が募る。県は地元経営者や人事担当者に呼び掛け、昨年から大学生へ仕事の特色や広島暮らしの魅力を伝える「業界研究講座」を始めた。
 7月末までに広島女学院大学、広島工業大学、広島文教大学などで各回2〜3社が学校へ赴いたほか、夏以降には立命館大学など、県外の大学でもオンラインを活用して同様の活動を計画。県内外の約25校で実施する。
 登壇する企業も熱が入る。人材確保につながる好機として若者の心をつかむ、独自の取り組みの紹介やプレゼンテーションに工夫を凝らす。6月に広島市立大学で講演したウェブサービスのフォノグラム(中区)は50人以上の学生を前に、企業サイトなどを活用したウェブマーケティングの需要が一層増えてくると業界展望を説明。個人の判断で在宅勤務と出社を選べる点や社員間のニックネーム制度、オフィス内に卓球台やバランスボールを置くなど、自由な社風も伝えた。
 広島文化学園大学の坂キャンパスでは7月、アミューズメント事業などのプローバホールディングス(安佐南区)が人事担当者と同校OBの若手社員の2人で登壇。90人近くの学生を飽きさせぬよう、掛け合いで30分間、OB社員が仕事内容や就職活動時の体験談などを話した。
 県は、大学3年生を主なターゲットにオンラインイベント「就活スターティングガイダンス」を6月上旬の平日夜、5日連続で開いた。世界への挑戦や街づくり、IT・DXなど、日ごとに異なるテーマに沿って大創産業、中国新聞社、マツダ、広島銀行、イズミといった有名企業10社が県内外学生へ取り組み内容を説明。併せて夏休み期間に開くインターンシップ(就業体験)への参加を促した。
 夏休みは「パッケージ型インターンシップ」と題し、学生は9コースの中から地域貢献やキャリア教育、理系向けの専門教育など興味関心のある就業体験プログラムに参加する。3社での実習に事前と事後の学習会をセットにした計5日間、本格的な就職活動を始める前の1・2年生を中心に受講。受け入れ企業は八天堂、ウッドワン、モルテンに加え、佐伯区で新工場の建設を進めるカルビー(東京)など。企業もねじり鉢巻きで真剣そのもの。
 現代の「Z世代」の学生たちは残業時間の少なさや休日の多さ、在宅勤務やフレックス勤務といった柔軟な働き方ができるかどうかを重視する傾向が強いという。仕事への意欲が低く感じる、といった嘆きもよく聞くが、結婚や子育てへ真剣に向き合いたいという意識もあるのだろう。
 学生からの質問は、男性を含めた育児休業や時短勤務の取得に関する内容も目立つ。若者の減少、流出をくい止めるために行政と企業が一体となり、彼らの価値観を理解した上で仕事の楽しさ、やりがいをどう伝えるかが一番の決め手。工夫が要りそうだ。

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