広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年8月5日号
社長を叱る

独裁すれども独断せず。民主主義の危険を知れ。社長の権限委譲は会社をつぶす。
 むろん政治体制の話ではない。7月12日にあった中国地域ニュービシネス協議会の経営者セミナーで「社長の姿勢」と題し、データホライゾン(西区)社長の内海良夫さんが講師を務めた。オンライン参加も含め、社長や幹部ら約70人が耳を傾け、メモを取る。社長の仕事とは何か。この一点に絞り、自らの体験を踏まえながら話した。
 内海さんは1981年に創業し、2008年に東証マザーズ上場を果たす。昨年はDeNAと資本提携。国の大事業とも言える健康増進や医療費適正化をけん引するデータヘルス(PDCAによる効果的な保健事業)を中心に、医療関連情報サービスの開発などを手掛ける。
 創業から15年は黒字と赤字を繰り返し、見かねて辞めていく社員もいた。よくも生き延びることができたと思うほどの〝ボロ会社〟だった。その頃にまさに運命を左右する、経営コンサルタントの一倉定氏(故人)との出会いがあった。考え方を学び、実践し以降、増収増益を続けた。一倉氏は空理空論を嫌い、現場実践主義を徹底。社長を叱りつけることもしばしばだったという。
「電信柱が高いのも郵便ポストが赤いのも社長の責任。世の中は常に変わるという前提でものを考えよ。事業経営の成否は99%社長で決まる。外部環境のせいにするな、全ては経営者の責任である」
 など、有名な語録の枚挙にいとまがない。
 内海さんは、
「社長の役割は経済に関する危険を伴う意思決定をし、その結果全てに責任を取る。社員に任せるのは決定ではなく実施。正しいワンマン経営は社長自らの経営理念に基づく会社の未来像を持ち、その未来像を実現するための目標と方針を、自らの意思と責任において決定し、これを経営計画書に明文化する。経営計画書を社員によくよく説明し、協力を求める。経営計画書の最も重要な施策は自ら取り組み、他は任せる」
 関心と行動の焦点を未来に合わせ、市場と顧客の要求の変化に対応して絶えず革新を行い、高収益型事業を創り出すことこそ、社長の仕事であると言い切る。考えに考え、体験と重ね合わせて到達した境地なのだろう。
 環境整備にも及んだ。
「規律、清潔、整頓、安全、衛生の5つの環境整備こそ人々の心に革命をもたらす。全ての活動の原点である。決められたことを守る規律、いらないものは捨てる清潔、物の置き方と置き場所を決める整頓の3つをやれば、安全と安心は自然にできる。社長自ら巡回し、チェック。抜き打ちは厳禁」
 など、まさに現場実践主義である。
「会社の真の支配者はお客さまである。優れた会社は顧客の要求に基づいて目標設定する。凡庸な会社はわが社の実情に合わせて目標設定する。変転する市場と顧客の要求を見極めて、これに合わせてわが社をつくり変える。社長はお客さまのところへ行く。アナグマ社長は会社をつぶす」
 考えに考え、企業の運命を決定し、その責任の全てを引き受ける。社長ならではのやりがいもあるのだろう。

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