広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年1月21日号
レモン生産にAI活用

国内シェアの約6割を占める県産レモン。その生産性向上へ向け、AIを活用するプロジェクトが進行中だ。
 採れたてレモンの画像から一定の品質やサイズの選別を自動化するもくろみ。広島県と東京のシグネイトが運営するオープン形式AI人材開発プラットホーム「ひろしまクエスト」を通じ、全国から画像選別のアイデアを募るコンペティションを2月1日スタートさせる。
 国産レモンの需要は伸び続け、生産量全国一を誇るが、生産者の高齢化が進み、出荷や選果の負担は大きい。百貨店やスーパーなどの小売り向けや、加工用などの用途次第で購入する際の決め手となる〝見た目〟の判断は出荷者によって微妙に異なり、需要家の求めにしっかり応えることで生まれる商機を逃している可能性もある。産地の呉市大崎下島は世界で初めてミカンの缶詰生産を手掛け、かんきつ畑で潤い、黄金の島とも称された。一方で、若者はどんどん島を飛び出し、黄金の畑は最盛期の3分の1に縮小。
 イノベーション立県を掲げる県はAI人材の育成をはじめ、デジタル技術普及などに体系的な事業を展開。同プラットホームはAI/IoTの実証プロジェクト「ひろしまサンドボックス」の一環で、昨年実施した第一弾のコンペはプロ野球がテーマ。2017年全公式戦で全投手が投じた25万球のデータを基に、翌・翌々年の球種とコースを予測。総投稿件数は3カ月間で1万479件に上り、オンラインで全国から2038人が参加。うち112人が〝カープを日本一にしよう!〟という命題に21件のアイデアを投稿した。想定以上の反響だったという。
 レモンをテーマとする第二弾は、AIに1000枚のレモンの画像データを学習させて自動で一定水準の選別を可能にするアイデアを募る。省力化に加え、付加価値アップも狙う。応募数は画像データ対象のコンペの水準を鑑み、数百人規模を見込む。
 コンペ方式により、データを駆使して地域の課題解決を導き出すAI人材を掘り起こし、県内企業などと人材マッチングを促す目的だが、県商工労働局の片岡達也主任は、
「AIに対する垣根を払い、敷居を低く、裾野を広げることが先決。今回は比較的に難易度が低く、われこそはと気軽に参加してほしい」
 サンドボックスで18年から始めた、レモン生産へのスマート農業導入を目指す「島しょ部傾斜地農業に向けたAI/IoT実証事業」の一環で大崎下島を舞台に全国からIT人材を集め、実装に向けたハッカソン(ハッカーとマラソンの造語)を一昨年開催。レモン判定装置の開発にこぎ着けた。1月30日、黄金の島再生プロジェクトに取り組む「とびしま柑橘(かんきつ)倶楽部」のとびしまカフェ(川尻町)に同装置を設置する。サイズや重さ、球状などの精度向上や判定ミスの再学習など課題もあり、今回のコンペは画像だけで読み取れる判定技を募る。国内唯一のAI開発プラットホームを運営するシグネイトの中山星一郎さんは、
「農作業は本当に大変。AIで確実に労力は軽減される。まずは興味を持ってほしい」
 香りと味の選別はまだ先のことになりそうだが、AIの名人技に期待が高まる。

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