元自民党幹事長の二階さん(85)は次回総選挙へ出馬しないと記者会見で表明。高齢のためかと問われて「年齢に制限があるのか、お前もその年が来る」とすごみ、ばかやろうとつぶやいた。その報道に少し驚いた。年齢にはどのような価値があり、どんな制約があるのだろうか。
思うように動けない。すぐに忘れる。若い時にはできていたのにと憂えるより、いまあるものに感謝する。しかし感情は素直に受け入れてくれない。人生100年時代の終盤に向けてどう暮らすのか。7月8日、市内ホテルであった広島経営同友会(三村邦雄会長)の例会で、医療法人翠清会会長の梶川博さん(梶川病院名誉院長)が「高齢期を楽しく上手に暮らそう」と題し、講演した。
1月に85歳を迎えた梶川さんは修道高校、京都大学医学部を卒業し聖路加国際病院でインターンを修了。脳神経外科専門に歩む。1980年に前身の梶川脳神経外科病院を開く。何と七夕の日、市内ゴルフ場で82のスコアをたたき出す快挙を成し遂げた。誠にお元気である。講演では「少年老いやすく学なり難し。老人忘れやすく学なり難し。なれど高齢者ほど安全志向で健康第一かつ無手勝流でいきましょう」と切り出す。頓着なく素直そのもの。
日本で講演した学者は「2007年生まれの日本人の50%は100歳まで生きる」と予測。平均寿命のうち男性は約9年、女性は約12年の不健康な期間(厚労省調べ)がある。健康寿命延伸は国を挙げて取り組む喫緊の課題。その3大健康疎外要因としてフレイル(虚弱)、サルコペニア(加齢性筋肉減少症)、ロコモ(運動器症候群)を挙げる。
「誰にも老いはやってくる。だが、まだできることがたくさんあると前向きに過ごすことで余生はがらりと変わる。年を取るほど知識と経験が積み重なり、自分自身の時間をより有意義に過ごせる。人に的確なアドバイスができる。人生を前向きに生きることができる薬はなく、医療はサポート役に過ぎない。高齢者本人の考え方そのものが高齢期を楽しく、豊かなものにするかどうかを決めるのです」
物忘れ(認知症)を何とかして改善したいと思うのが人情だが、そのネガティブな面を強調するのではなく、長生きの同伴者、長生きのご褒美と考えてみてはと助言。よほどの境地に達しないとかなわない極意に思える。
「昨日は82のスコアで回ることができた。一緒にコースを回ってくれる教え魔の知人がアドバイスしてくれる。打つ瞬間までボールをしっかりと見なさい。ちょっとそこはおかしい。かかとをしっかり地につける。などとアドバイスにかかり切り。早く打たんかとイライラされる方も多いと思うのだが人は人、自分は自分です」
人のアドバイスを素直に聞く。反発などしない。自分のペースで上手に暮らしを楽しむ。そこに感謝の心もあるのだろう。ひたすら精進してきた人生に与えられた贈り物かもしれない。病院で診療していると「どうしてこの人はこんなに前向きに楽しく生き続けられるのだろう」と不思議に思う高齢者にしばしば出会うという。医師の立場を離れて自分もこの人のように暮らしたいと願う。不幸な出来事も全てありのまま受け止め、プラス思考で自分の人生を楽しむ姿勢を貫いていると感じさせる。いまを楽しむかどうか、全て自分次第。