国を守る士官養成の教育機関として、海軍兵学校は1888年(明治21)に東京の築地から江田島へ移転。いまは海上自衛隊の第一術科学校がある。JR西日本グループの広成建設(東区上大須賀町)は昨年春、新幹線の線路やトンネルなどを再現した「江田島研修センター〜み・ら・い〜」を開設した。全国的に珍しく、鉄道ファンをはじめ観光関係や教育機関からも関心を集めている。
廃校となった旧切串中学校を3階建て研修施設にリノベーション。1万3000平方メートルの校庭に新幹線の線路や新幹線分岐器などのほか、在来線のホームや踏切を設けた。4月から協力会社なども加えて本格的な活用を始める。半田真一社長は、
「教育の場として伝統のある江田島市の中学校が廃校になる話を耳にし、未来へつなげる研修センターの立地を決めた。眼下に瀬戸内海が広がる見晴らしも素晴らしい。ある会社の研修施設からは富士山が見渡せ、学ぶ場に眺望は大切だと思う。宇品港や天応港からフェリーが出ており、海上交通のアクセスに恵まれている。研修などで多くの関係者が出入りすることにより、少しでも地域貢献できればうれしい」
中学校から巣立った生徒たちの思い出を残したいと、学校の名前が刻まれた門扉や校歌などは玄関に保管。外付け立体フレーム等の耐震補強を施して、教室の面影をなくさないように配慮したほか、校庭跡に設けた在来線の駅名は地元の小学生から公募。地域に開放し、すでに切串町民の多くが訪れたという。社会見学の場に生かすほか、鉄道ファンらが訪れる施設としても地元の期待は大きい。
「宿泊や飲食関係などはできるだけ地元活用の仕組みをつくり、事務職員は地元の方を雇用。明岳周作市長からは子どもたちの見聞を広めてくれると喜んでもらった。線路のない江田島の小学生は鉄道に触れる機会が少なく、まして新幹線の線路の上を歩く経験はできない。鉄道へ夢を育む場になり、鉄道を志すきっかけになればその意義は計り知れない」
新幹線大規模修繕計画
1999年に山陽新幹線の福岡トンネルでコンクリート塊が落下する事故があり、走行中の新幹線を直撃。幸いにも車両の脱線はなく、人的被害はなかったが、ダイヤの乱れで十数万人の乗客に影響が出た。老朽化対策として、2028年から10年間、約1500億円をかけて山陽新幹線の大規模修繕を実施する計画だ。新幹線を止めることはできず、その点からも事前に最適な修繕方法の実証を確認する施設が必須だった。今後3年間で修繕方法を確立させる予定。トンネル上部を補強する方法は材質一つとっても時速300キロで走る新幹線の風圧等を十分に考慮しなければならない。わずかな品質の差が安全上問題はないか、検証に検証を重ねる。修繕作業は夜中の限られた時間を使うほかない。早朝には通常通り新幹線を走らせるために機材の搬入や搬出などの効率的な方法を確立し、1日の作業時間の最大化を目指す。
「新幹線は国の重要なインフラであり、将来をつなぐ貴重な財産、長期的な計画で修繕サイクルを見通しており、われわれには後の世代が新幹線を安心・安全に利用してもらえるよう全力を尽くす責務がある。それを誇りに日々精進したい」