広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

コラム― COLUMN ―

2026年2月12日号
人が集まる会社

元日。玩具やホビーの専門店「ホビーゾーン」を全国展開する冒険王(安佐北区可部)は各店とも多忙を極めた。1都1府30県に出店する全65店舗で計1億円を売り上げ、うれしい悲鳴が上がった。
 勢いがある。12月〜1月共に前年同月比30%増を上回る売上高11億円強をたたき出した。今5月期売上高を上方修正し97億円を見込む。堀岡宏至社長(43)は、
「円安などから海外旅行を控え、親族ら身近な人と過ごす傾向が強まり、家族連れを中心に幅広い年齢層の来店客を想定。売れ筋を捉えた品ぞろえが支持された。さらに玩具を楽しむ30〜40代を中心にした〝キダルト層〟の旺盛な購買力が、全体の売り上げを押し上げた」
 三つの経営戦略を徹底している。一つは集客力の高い地域一番店の郊外型大型商業施設に絞った出店。その客層をにらんだ品ぞろえ。そして最も重視するのが、経営を支えてくれる人材の確保。
 業種を問わず、採用難が深刻さを増す。やっと採用してもあっという間に転職。頭を抱える経営者は多い。しかし同社は、アルバイトから正社員に登用する独特の方法を設ける。つまり採用募集広告は不要。このやり方で確実に成果を挙げているという。
 正社員に登用する基準がある。店長経験を1年以上。他店勤務1カ月以上。店長塾に参加。エリアマネージャーの推薦条件を満たす。これらをクリアしなければならない。アルバイト募集は店頭の張り紙などで呼びかけ、採用にかける費用はゼロに等しい。年齢・性別不問。岐阜のイオンモール各務原店の女性店長、吉良さんは41歳。入って2年足らずで現職に就く。女性従業員のモデリングになってほしいと期待をかける。
「先輩が自覚し、責任を持って後輩を育てる循環を大事にして教育・研修を内製化していきたい。店長には業績などの発表の場も設けている。何事も自分事として考えてもらう。全員が経営感覚を意識しながら実践する社風を根付かせたい。商品の特性上、好きだから当店に応募するケースが多く、アルバイトで経験済みだから入社後のミスマッチがない。アルバイトからの採用は、これが大きい」
 人材が育まれる好循環を生み、業績を押し上げる。
 勤務時間に制約のある人にはアンバサダーなどのポストを用意。やりがい、働きがいが失われないよう細やかに気配りする。正社員41人、アルバイト293人。店長65人のうち24人が、正社員の予備軍として控える。
 同社の前身は家具店。業界不況にぶつかり当時、2代目社長を継いだ、現会長の洋行さん(76)は、進路選択の決断を迫られた。家具に見切りをつけ1992年、玩具販売で勝負に出た。その頃に、
「経営を学ぶために通っていた大学で言われたことがあった。(大手と違い)冒険王にいい人材は来ないでしょう」
 アルバイトの中から人材を見極め、プライドを持てる職場をつくると決意した。
 2021年に3代目を継いだ宏至社長は医療情報システム会社に16年勤務。そのとき上司に恵まれた経験が人材を大事にする意識を磨いた。まさに親子伝来だ。
 店舗の平均年商1億5000万円。全員で経営理念〝楽しさの創造〟を共有し実践。全国へ多店化を加速する。
「人を集めるのではなく、人が集まる会社にする」と言い切る。こうなると強い。

一覧に戻る | HOME