広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2019年1月10日号
会頭改選期

今年は、広島商工会議所の会頭改選期。いつもなら夏ごろから次期会頭の選出をめぐる動きが始まるが、今回は年明け早々からいろいろと話題に上りそうだ。
 3期9年目の深山英樹会頭(77)は10月で任期を満了する。一方で、広島経済同友会の次の代表幹事に、広島ガスの田村興造会長(67)を内定し、4月の総会で正式決定する。任期は2年。慣例として2期4年を務める。そうすると4〜9月の半年間、広島ガス出身の商議所会頭、同友会代表幹事の任期が重なることになる。両団体トップを一つの会社から出すのは負担が大きく、これまで避けてきた。しかし、半年限りならと広島ガスや関係者の了承を得て、次期代表幹事が内定した経緯がある。既に深山会頭は「今期をもって退く」意向を固めているという。
 広商議会頭は、日本商工会議所の副会頭、中国地方商工会議所会頭も担う。近年は「ご三家」と呼ばれるマツダ、中国電力、広島銀行を軸に選考を進め、水面下で打診したものの不調に終わり、異例ともいえる3期9年に及ぶ深山体制が続いた。
 目下、商議所ビル移転・建設計画のほか、遅々として進まない旧市民球場跡地の利活用、サッカー専用球場建設などの課題を抱え、行政と足並みをそろえて推進していく重責をどうこなしていくのか。ぐいぐいと広島を引っ張るリーダーの登場を願いたい。はや有力候補者に、4月で任期を満了する同友会の池田晃治代表幹事(広島銀行会長)らの名が上がるが、さて。  魔法の杖など存在しない  先週号に続き、マツダデザイン部門リーダー、常務執行役員の前田育男さんの著書「デザインが日本を変える」の第3章「ブランド論」のさわりを紹介したい。
 一般ユーザーにいくつかのプロトタイプを見てもらい、意見をヒアリングして、それを商品に反映させるという過程に強い不満を抱いていた前田さんは「市場調査の廃止」を決断。こう述べている。
 −数年後に発売されるモデルに何が求められるのか、はたして一般のユーザーにわかるのだろうか。そもそもユーザーの言う通りにデザインや中身を変更するということはメーカー側の意思やポリシーはゼロということにならないか。そんな受動的な姿勢でいる限り、マツダ独自のブランド価値はいつまで経っても確立できないと思っていた。
 −マーケティングに携わる人たちはブランディングと呼ばれるイメージ戦略によってブランド価値を上げられると考えているようだが、私に言わせればそんな魔法の杖など存在しない。錬金術のようなやり方で誰もが憧れる理想の商標を手に入れることなど逆立ちしてもできはしない。ブランドにとって一番大事なものそれはまず作品である。最高のブランドを作ろうと思ったら、まず最高の作品を作るしかない。作品自体が個性的で世界のトップを張れるようなものであれば、おのずとブランド価値は付いてくる−
 世界的に評価されるマツダの「魂動デザイン」誕生までに、経営戦略にまで切り込むデザイナーの矜持(きょうじ)があり、その挑戦は個性的だが、さまざまな企業経営に通底するアピールに満ちている。

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