広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2019年7月4日号
隣の土地は倍出しても

よほどの感慨と、さらなる意気込みがあったのだろう。6月21日、中区紙屋町の東館(旧本館)と西館(旧新館)に設けた4階の連絡通路で結ぶツインタワーのエディオン広島本店を開いた。久保允誉社長が内覧会のあいさつで、 「この地は私にとって本当に思い入れの深いエリアです」
 と切り出した。西館で生まれ、そこで幼い頃を過ごしたさまざまな思い出とともに、創業者の父・道正氏(故人)の言葉などを引用し、前身の「第一産業」が30坪で創業以来、順々に土地を買い増し広げていった経過について、
「祖母が父に、『大きな夢を持つのだったら隣の土地を倍出しても買え』と言う。そして 450坪の一画にすることができた。父は私に、『ここと西館ができて3階か4階にブリッジがあるツインタワーができたらいいな』という風なことをよく言っていた。先日、おふくろが来て『ブリッジのところで昔を思い出しながら涙が出たよ』と話してくれました。先代ができなかったツインタワーを、このようにできたことを、非常にうれしく思っております」
 新しい店のコンセプトは体験、体感、そしてわくわく感とか楽しさを提供。商品を売るのではなく、その商品の価値、機能を売っていることを基本につくったという。 
 5年前にアメリカを視察。その頃、アマゾンなどのネット販売が全米を席巻し、小売業のリアル店舗が非常に厳しくなってきているというニュースにあふれていた。
「今はウォルマートが世界一の小売り大手だが、その前はシアーズ。そのシアーズの店舗に行ってびっくりした。昔のイメージはなく、20%オフとか、40%オフとか、60%オフとか値段だけで、全然わくわく感や楽しさがない。こういう店舗だったらネットに負ける、ネットの品ぞろえ、価格には勝てない。シアーズは外からやられたのではなく、新しいことにチャレンジすることなく、中から厳しくなったのではないかと感じた」
 ちょうど2年前、広島の蔦屋家電をオープン。居心地がよく、「本」を磁石にして来店客数を上げていく店づくりにトライアルし、2年目になって2桁以上伸び、6月も20%の伸びを見せた。非常に手応えを感じているという。アメリカ視察で確証を得て、新しいことへ敢然と挑戦した結果なのだろう。
 さて、このツインタワーをどういう店舗にするのか。いろいろと悩んだが、やはり家電に立ち戻ったようだ。
「家電で引っ張る、家電でわくわくして来店していただけるような、家電の原点をツインタワーで実現したいということで家電をベースに、新しい住まいの提案にもつながる店づくりを目指した。不易と流行ということがあるが、決して変わらない部分と、時流に乗って変わっていかないといけないものがある。その中で今、ドローンとか、eスポーツとか、そのような新しい時流に乗った商品、あるいは楽しみ方というか、アミューズメント性を持った構成にしている。ツインタワーの社員は非常に専門知識を持ったコンシェルジュ、そういう人を配置。『買って安心、ずっと満足』していただけるよう一生懸命やっていきます」
 新しい潮流には、危険もチャンスも潜むという。

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