2020年の注目ポイントの一番に東京五輪、そして米国大統領選挙、第5世代移動通信システム(5G)を挙げた。国内や県経済の見通しについて、ひろぎん経済研究所の水谷泰之(ひろゆき)理事長は、
「何と言っても東京五輪が最大のイベント。大きなインバウンド効果や国内消費の底上げが期待される。五輪後の景気を懸念する声もあるが、首都圏を中心に大型プロジェクトが続いている。さらに5G関連投資の本格化による半導体市場の回復や、世界景気持ち直しの動きも徐々に強まるとみられており、大幅な落ち込みにはならないと考えている。広島県では、当面、輸出や生産が全国同様に弱含む可能性がある。しかし、広島市など都心部でのホテル、オフィスビルなどの建設や、災害からの復旧復興工事による下支えが見込まれるほか、東京五輪や昨年11月のローマ教皇来広を契機とした外国人観光客の増加も予想される。年間を通してみれば、緩やかな成長が続くと期待」
過去7大会の五輪開催国の平均成長率をみると、開催前の3〜1年前は競技場やインフラ整備などの大型プロジェクトが相次ぐことから伸びる一方、開催年と1年後は反動で伸び悩む傾向がある。しかし東京では、
▷品川新駅(仮称)全面開業=総事業費約5000億円
▷虎ノ門・麻布台プロジェクト=約5800億円
▷東京駅日本橋口前の常磐橋街区再開発=約1兆円
▷東京〜大阪間の中央リニア新幹線開業=約9兆円
▷羽田空港アクセス線整備事業=約3400億円
▷渋谷エリア再開発=4つのエリアで進行中
などの大型再開発案件がずらり。さらに五輪開催国のインバウンド需要は長期間にわたって喚起される傾向があるという。わが国では昨年のラグビーワールドカップやローマ教皇来日なども追い風となり、今後、さらにインバウンドが増加する可能性が高い。
トランプ大統領は選挙中の景気後退を避けるため、自国の景気にもマイナス影響が及ぶ対中貿易摩擦の激化を避けたいのが本音ではないか。しかし中国の産業政策など米中間の根本的な対立点の解消は容易でない。香港情勢などと合わせ、予断を許さない展開が続く。さて、どうなるか。
5G。その主要性能は超高速、超低遅延、多数同時接続という。例えば、超低遅延は自動運転の実用化などに、多数接続は大量のセンサーから集まったデータを活用するスマート工場やスマートシティーの実現に役立つと期待されている。幅広い産業分野に影響が及び、総務省資料によると経済効果は46.8兆円。このうちバスやタクシーの自動運転、トラックの隊列走行などが計画されている交通・移動・物流分野では21兆円と試算している。果たしてどんな時代が訪れるだろうか。
水谷理事長は1984年に京都大学法学部卒業後、広島銀行に入行。総合企画部ALM・リスク統括課長、東京支店副支店長、コンプライアンス統括部理事、常任監査役などを経て昨年6月から現職。気取ったところがなく、ざっくばらんである。自ら銀行員に向かなかったと言うが、本質へ向かう切り口は鋭い。
「ボーッと生きてんじゃねえよと自分を叱らなきゃね」