幾多の修羅場を乗り越えてきた経験が経営者に自信と勇気を与え、揺るぎない経営観となったのだろう。
広島の企業経営者らを取り上げた2冊の本が相前後して発刊された。「ひろしまのすごい社長たち」(南々社発行)は、個性豊かな14人のトップが登場する。こんなことを語っている。要約。
エスエスジャパンの佐々木世紀男(せきお)代表取締役。日々を疎かにしない。ごまかさない。誠心誠意、仕事をする。ただそれだけ。小さなかすり傷から事故による大破まで、同じ傷は一つもない。事故車を扱う板金、塗装は1台1台が全て異なる作業。それができるところにステータスがある。当然、高い技術が必要で、自分自身が試される仕事だ。開業以来37年、事故車修理のクレームは1件もない。
他人と同じ仕事をしとったら、値段で天秤にかけられて自分の能力と関係ないところで競わんといけなくなる。だから、誰もようせんことをやろう、と決めた。それができる板金の妙技に惚れ込み、技術を武器に無理難題に挑み、特許や意匠登録も取得。戦略的に事業化してきた。
オオアサ電子の長田克司代表取締役。一人のヒーローはいらない。それぞれが得意分野を生かし役割を果たすことで会社は成長する。窮地に陥って苦しんだときこそ、今ある仕事を究める。そこを掘り下げていけば必ずチャンスは生まれてくるものです。
面白そうだ。とにかくやってみよう。鈴虫の鳴き声のように、どこから聞こえてくるか分からないけど音が聞こえてくる。そんなスピーカーを作ろうというのが共通のコンセプト。音を拡散させる独自の仕組みを開発しました。
バルコムの山坂哲郎代表取締役。人を育てることほど難しいことはありません。若い子たちは楽をしたがる。そうした変化を受け止めながら社員に愛を持って接することが大切。社員とは家族のようなもの。人に愛を持ち続けることは経営者にとって最も大切な感性、資質だと思う。
青果物卸売販売の古昌の古本由美代表取締役。元々、商売なんて大嫌い。企業社会は男社会、男に負けてはならないと猛勉強をしました。意地だけで頑張っていたのかもしれません。強硬に自分の意見を主張し、社員に急激な変化を求めました。決意もないままに事業を継承したものの、世の中は大きく変化しており何とかしなくてはならないとあせりました。女であることが仕事の上で邪魔な気がして虚勢を張っていたのかもしれません。
起こることはすべて必然。そこには必ず原因がある。不都合なことが生じても、それを人のせいにしてはいけません。むしろ自分の方にあることも心得ておくべき。自分自身、これまで人との出会いはラッキーの連続でした。
各社の理念、社員からのメッセージも載せる。経営危機や社員の反発、病苦などの苦境に立ち向かい、渾身(こんしん)の力でくぐり抜けた経験から吐露された言葉は、ずしりと重い。
もうひとつ。広島テレビの番組「Dearボス〜トップの秘密のぞき見バラエティ〜」が本(南々社発行)になった。放送内容に追加取材して構成。日本一の木材会社、中国木材の堀川智子社長ら12人が登場する。−次号へ。