中国5県のプロスポーツクラブや企業、関係団体などが地域や競技の枠を越え、ビジネス連携を図るプラットフォーム「ちゅうごく5県プロスポーツネットワーク(通称スポコラファイブ)」の取り組みが注目されている。
中国経済産業局が2017年に立ち上げた全国初のプロジェクトで、新しいビジネス創出などにつながる仕組みづくりを目指す。その一環として1月30日、企業約50社を含め関係者約100人が集まり、「スポコラファイブ中国地域スポーツ関連ビジネス成果報告会」があった。
当日、スポーツの成長産業化と基盤形成に向け「スポーツ新連携パートナーシップ制度」を創設。企業が広告などによってプロスポーツクラブの運営を支え、その広告効果などに期待する従来型のスポンサーシップとは異なり、新設のパートナーシップ制度はスポーツという経営資源(リソース)を活用し、地域や社会の課題などを解決する新たな関係構築を目指す。
第1号で野村乳業(府中町)と自転車ロードレースのヴィクトワール広島が合意書を交わした。広島大学と共同開発した植物乳酸菌発酵エキスを選手に摂取してもらい、競技への影響などを分析し効果を検証。商品開発や販売拡大に役立てる。野村和弘専務は、
「パートナーシップ制度を通じて、これまで接点のなかったプロチームの協力を受けることになり、研究開発の輪も広がる。自社だけでは限界のある事業展開に、新たな道筋を見いだせるチャンスを頂いた。植物発酵乳酸菌エキスの摂取によって選手のパフォーマンスがどう高まるのか、大いに期待している」
スマホを利用してコインを貯めると観戦チケット交換や店舗の優待などが受けられる〝サンフレッチェコイン〟事業を昨年11月4日〜12月7日、紙屋町シャレオで実証した結果、狙い通り観戦客と店側の集客が図れたという。スポーツとの連携でビジネスの視界が広がり、新たな発想に弾みがついているようだ。
国は日本再興戦略でスポーツを成長産業に位置付け、2025年までに15兆円の市場規模を構想に描く。これを受け、プロジェクトに取り組む中国経産局の担当者は、
「スポコラは県域を越え、新たな切り口で横断的にスポーツとビジネスの連携を展開する仕組みで、地域に新しい価値と元気をもたらす可能性を秘めている。スポーツの魅力と機能を掘り起こしながらパートナーシップ制度を後押ししたい。これまでにないビジネスが生まれる可能性も十分に期待できる。いま2号、3号を仕掛けている」
その日は広島市や県、商工会議所の3者トップ会議が開かれ、中区の中央公園広場へ3万人収容のサッカースタジアム基本計画の素案をまとめた。都市再生緊急整備指定地域という立地を生かし、24年開業を目指す。さらにサンフレコインの機能強化、発展にも期待がかけられる。
広島には多くのプロスポーツがあり、ファンを楽しませる。一方で、総務省の19年の人口移動統計報告によると広島県の「転出超過」は8018人に上り、全国最多。スポーツの力で地域や企業が大いに元気になり、新たに人を呼び込むことになれば、その相乗効果は計り知れない。