広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2020年2月20日号
県は断念、市はいかに

西日本最大規模の流通拠点を誇る広島総合卸センターや広島市中央卸売市場などが立地し、大勢の人が働く西区の西部流通団地。同地区と広島西飛行場跡地を候補地に見本市や国際会議を開く「MICE(マイス)」施設整備の構想を描く広島商工会議所の提言を受け、市は本年度事業で卸センターや建て替え計画が進む中央市場、町内会などでつくる「商工センター地区活性化検討会MICE部会」を設置するとともに、施設の整備可能な規模・機能などの調査をコンサルタントに委託。具体化へ向け、一歩踏み出した。
 一方で県は1月中旬、西飛行場跡地を建設候補地としたMICE施設の計画を断念すると発表した。東京や大阪などの大都市との競争に勝つのは厳しく、採算性などのリスクを抱え、あえて行政や民間が数百億円に上る巨額投資に踏み切るのは困難−として決断した。そもそも両地区にまたがる大規模な構想そのものに無理があったのか、あるいは全体規模を縮小して商工センター地区に絞り込まれたことにより、実現性が高まったと見るべきか。市の調査結果を待つほかないが、「都市間競争に打ち勝つ方策を練り、他都市に比べて立ち後れているMICE関連施設をいち早く整備。広島のポテンシャルを引き出してもらいたい」という地元の声を受け、どのような判断が示されるだろうか。将来へ、国際平和文化都市広島の発展を左右する大事な局面に差し掛かっているように思える。
 2月4日にあったMICE部会では2020年度も部会を継続し、事業促進の役割を担うファシリテーターとして活躍する田坂逸朗氏を部会の進行役に起用。田坂氏は福岡市のまちづくりに関するプロデュースなどに実績がある。20年度中には商工センター地区まちづくり素案を提言することにしており、これを機にMICEという駒を進めることができるのか、鍵を握る1年になりそうだ。
身の丈より上に挑戦
 1月31日をもって卸センター近くの商業施設アルパーク東棟の天満屋アルパーク店が約30年の歴史に幕を閉じた。華やかな光を消し、ひっそりとたたずむ。団地進出企業が移転、操業して間もない1978年ごろ、団地内利便施設としてスーパーを誘致するプランが浮上。これを西部団地組合連合会と商工会議所が市へ要望し、その後JR新井口駅の開業や、草津沼田道路の開通などの環境変化を理由に、商業街区整備計画としてアルパーク東・西棟の建設につながった経緯がある。
 百貨店経営はさらに厳しい環境にさらされており、天満屋アルパーク店の撤退はそうした事情が背景にあるが、地域にとって、ぽっかりと穴が空いた印象を拭えない。両棟を一括買収した大和ハウス工業(大阪市)は、東棟をリニューアルして商業施設の営業を継続する意向という。
 これからも繁栄と衰退を繰り返すだろうが、団地施設の老朽化にタイミングを計ったようなMICE施設整備の構想がこの機を逃し、大幅にずれ込むことになれば「もはや広島に出番はない」と烙印(らくいん)を押される懸念はないだろか。身の丈より少々上のまちづくりに挑戦する前傾姿勢をとってもらいたいと願う。

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