広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2020年3月12日号
じっくり学ぶチャンス

人生のすべてを懸け、社業発展に力の限りを尽くしてきた。しかし振り返ると事業を継ぐ者がいないという難関が立ちはだかる。広島修道大学は2020年後期から全7学部の2〜4年生を対象に、新しい科目「広島の事業承継を学ぶ」を開講する。地元の経営者も授業に携わる予定。
 このまま後継者難が解決しなければ、2025年ごろまでの10年間累計で最大約650万人の雇用と約22兆円のGDP(国内総生産)が失われるという経済産業省の試算がある。どういう訳か、広島県内企業は後継者不在率が高く、全国4位(帝国データバンク調べ)という。それにしてもなぜ学生のときに事業承継を学ぶのか。
 6200名の学生を抱える同大は広島経済界の要請によって設置された経緯がある。地域出身の学生が多く、卒業後、地元企業に就職するケースも多い。さらに企業経営者の子弟が多いという事情もあるだろうが、むろんそれだけではない。三上貴教学長は、
「経営的な視点をもって中小零細企業が抱える課題を考えてみることにより就職活動はむろん、起業や創業、事業承継などの進路選択肢を広げ、さらに企業経営者から直接、さまざまな経営上の課題を解決するための知恵や戦略を学ぶ価値は大きい。そうして地域社会に貢献できるキャリアをどうやって形成していくのか。自らの人生設計を描くことにより、物事を深く考える契機としてもらいたい」
 自立するとともに、自律できる人材を育む狙いがある。
 新科目は、県内企業の廃業実態や事業承継・M&A(合併と買収)の事例、地域経済の活性化などをテーマにした講義に続き、地元経済界や同大卒の経営者から親族承継、親族外承継の事例などを13回にわたり学ぶ。
 広島経済同友会や広島県中小企業家同友会などと包括的連携協定を結ぶ。経済団体の協力を得ながらこれまでに企業見学バスツアー(延べ43社・団体、250人参加)のほか、「業界セミナー」や「経営者と語る会」などを実施してきた。就職が目的となり大企業、安定志向に流れる傾向にあるが、参加した学生は、まったく縁のなかった経営者に接し、多角的な視点で洞察する能力や、自分の意思で将来を決めるという気概の大切さに気付かされたのではなかろうか。担当教員は、
「実際に企業で働く方と接し言葉を交わすうちに、学生たちの目つきが変わってきた。インターネットや企業説明会などでは知りえない、企業トップの思いや信念に触れることができる。本人次第だが、自分の人生に対する姿勢、将来を考える大きなヒントや羅針盤になると思う」
 広島にはオンリーワンや個性的魅力を備えた中小企業が分厚く集積している。だが、どの企業も同じレール上を走り続けるわけにはいかない。伝統的製品と新しい価値を付加した新製品のマネジメントや社内ベンチャー、イノベーションを起こすことができる人材に対する産業界、企業の要請は一段と高まっている。中小企業の採用難が続く一方で、離職率も高い。入社後にこんなはずではなかったという思いが繰り返されることがないよう、いかに生きるか、社会へ出る前にじっくり考えるチャンスではなかろうか。

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