おかげさまで、4月で創立70年。約1年の準備期間を経て、1951年5月20日付で発刊した創刊号「廣島経済情報」(53年から現名称)の開設あいさつで、編集方針について、
▷出版以外一切、商売をしない。集めた情報を出版以外に流用しない。
▷自分の都合次第で利害得失を売り込むことはない。
▷主観を押しつけることもない。物足りなさがあると思うが、事実を事実として伝えていく。
創業者の福間一郎の方針はその以降、先輩から後輩へ受け継いできた。95年4月15日号の通巻2000号の特集企画に、広島県の竹下虎之助前知事、中国新聞社の山本朗社長、広島高速交通の川原太郎社長、賀茂鶴の石井泰行社長らから寄せてもらった言葉を掲載。むろん、社交辞令もあろうが、
「(広島経済レポート)発行日が楽しみでした。どうしてだろうと改めて考えてみると記事を書く人、編集する人が積極的に自分の意思を表に出さず、淡々と書き、編集し、判断は読者の意思を尊重する方針を貫いていることが、安心し信頼して読める所以(ゆえん)だなと気付きました」(川原太郎)
創業来の編集方針を評価してくれており、一層の精進を肝に銘じた。
決して変節したわけではないが、最近、主に広島の中小企業を対象に、当社の取材、編集経験を生かして、専門家の力も借りながら人材採用支援事業を始めた。出版以外一切、商売をしない方針は守り切れなかったが、地域や企業に少しでも役立つことができればという創業精神はこれからもぶれることはない。
よく人、物、金、情報というが、これまでもこれからも企業にとって人材が一番。とりわけ中小は人材確保に苦戦し、大企業の後塵(こうじん)を拝してきた。しかし広島には優秀な中小企業が分厚く集積し、個性豊かなオンリーワン企業、魅力的な企業が数多く存在している。これを学生にどう伝えればよいのか。本誌のほか、2088社を収録した広島企業年鑑、42業界と主要企業がひと目でわかるひろしま業界地図の発行や、ウェブサイトひろしま企業図鑑の情報発信を通じて、少し気付くことがあった。編集企画で、学生が経営者に聞くインタビューコーナーは学生も経営者も真剣そのもの。学生が取材し記事を書く。この経験を就職活動に生かすことができないだろうか。どんな質問をすれば本質的なことや役立つ情報を引き出すことができるのか。どのように記事をまとめれば大切な事を伝えることができるのか。次第に学生の目つきが生き生きとしてきた。
一方で、企業のつくった求人案内やパンフレットは、ともすれば自社PRを優先していると思われることがある。事実を事実として伝える第三者の立場で、経営者の志や企業情報のポイントなどを捉えた記事や動画を制作。これらの媒体制作を通じて企業の求人機会を広げ、学生の就活や進路選択に役立ててもらう。じかに触れる情報交流を通じて双方に思い違いのない求職、求人のマッチングの仕組みを構築。偏った情報を流し学生を迷いの道へ進ませてはならない。これが一番に大事。少しずつ求職、求人の輪を広げていきたい。