広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2020年7月30日号
中心部の空洞化

ショッピングや街歩きでにぎわう繁華街。夏のバーゲン前倒しもあり、ようやく活気を取り戻してきた。店に入る前にマスク着用とアルコール消毒を求められる。3密を避ける「新しい生活様式」にも大分慣れてきた。
 広島修道大学商学部の川原直毅教授は、
「広島の小売商業の年間販売額は年々減少し続け、政令市の札幌、仙台、福岡に比べて市場規模も縮小している。2007年に1.3兆円あった小売り年間販売額は、現在1.25兆円に縮小。市内の小売店舗数は同年で9126店あったが、5年後に6605店。実に2500店以上も減った。明らかに中心部の空洞化が加速している。一方で、福岡は1.4兆円から1.7兆円に拡大。九州全域を商圏に抱える。しかも大型クルーズ船が入港できる港が2カ所あり、インバウンドの受け皿がある。00年に広島市内にあった5つの百貨店の合計販売額は2000億円。19年には1300億円(1店舗減)にまで減少している。その落ち込みはあまりにも大きい」
 30年以上、小売りや商業施設の研究に携わり、自ら現地に赴き消費者を観察、分析するフィールドワークを貫く。まちづくりや地域活性化などにさまざまな提言を行ってきた。札仙広福のうち、かつては一番栄えていた広島。いまは商業で見る限り最も遅れていると指摘する。
「消費者の低価格志向は依然として根強い。しかし市場はほぼ飽和状態。近年、ドラッグストアとSMのコラボによる出店の相乗効果が顕著で、さらに中規模のディスカウント型SMの進出が相次ぐ。より消費者に身近な商売で安価な商材を提供する競合店が既存の大型SCと対抗する形でドミナントの争奪戦が激化。他都市は大型店やさまざまな業態が広島と同様に出店しても商圏が拡大している。逆に商圏規模が縮小している広島のどこに問題があるのか。商業施設にとってMD(商品政策)の見直しが非常に重要であるにもかかわらず、長期にわたり固定化されていることも要因の一つではなかろうか」
 モノからコトへ、消費のキーワードが時代とともに変わってきた。しかし、2割の顧客が8割の売り上げを生む百貨店では、顧客の顔が見える接客が最も大事。リピーターづくりこそ、一番の生き残り策とも言う。
「行政は長期ビジョンで広島駅前と紙屋町・八丁堀の楕円形構想を掲げる。されど紙屋町・八丁堀は一丁目一番地。ところが地下街シャレオは空き店舗が目立つ。つまり店舗側が家賃に見合う魅力を感じていない表れではないか。楕円構想は回遊性を重視しなければならない。JR広島駅南口に広電が高架で乗り入れ、有機的なつながりができる。建て替わる駅ビルにどのようなコンセプトでどんな商業施設、ホテル、シネマコンプレックス、スパなどが導入されるのか、客動線が大きく変わる可能性がある。一方、サッカー場ができても試合数は20試合に届かない。サッカー場周辺を単に公園にするのではなく、回遊性を伴う飲食、物販などの商業施設が点在することが付帯条件だろう。決してハコモノ行政に終わらないことだ」
 新たな発想による街づくりの仕掛けが肝心と言う。

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