広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2020年10月22日号
移住希望を察知

どんな暮らし方を望んでいるのか、どんな仕事に就きたいのか。移住を検討している相談者のニーズやその熟度などをAIが判断し、回答を出し分けするという。
 広島県は、東京の移住相談窓口で蓄積したノウハウなどを生かし、全国初の機能を実装した「AI移住相談システム」の本格運用を始めた。昨年11月26日から試験運用を開始し、現在の登録者数は1万8千人弱。登録制のウェブ移住相談では全国最大規模を誇る。いつでも、どこからでも相談対応が可能で、一日当たりの相談件数は多い時で700件を超える。
 登録者アンケートで「移住に関して新たな気付きがあった」「ネット検索では入手できない情報が分かった」などの評価が多数を占める。AI相談を機に、実際に相談窓口を訪問し、広島県に移住した事例もあるという。
 例えば、利用者が自由記入欄でそれまでに使ったキーワードからニーズを判断し、AIの中に蓄積した関連情報の中から、親和性の高い情報を複数提示する。どんな仕事を求めているのか。それまでに使ったキーワードから「おしゃれな職場に関心がある」と判断し、セレクトショップやワイナリーなどを紹介するようなケースもある。蓄積されたノウハウや膨大な情報から回答を引っ張り出す機能があり、相談者さえ気付いていなかった「潜在的な意識」などが可視化され、再認識することに役立つ価値は大きい。
 こうしてAI自身も機械学習という機能でさらに学習を重ね、その力量を一段と高めることにより、人の記憶力や心遣いなどで補い切れない分野をカバー。AIならではの得意技を発揮する仕組みで、確かに便利である。しかしAIに暮らし方まで制御され、ついに考える力が失われはしないかと余計な心配もしたくなる。県地域力創造課は、
「移住という大きな決断には人と人とのつながりが不可欠です。AIなどのウェブ上の仕組みと、人と人の対面による仕組みを融合させて、移住の流れをより大きく持続可能にしていきたい」
 豊富なデータを自在に活用し、どちらの方向に進むべきか。自ら意思決定を下す力がさらに大事になりそうだ。
 試験運用を経て大幅にリニューアルし、本格運用を始めたAI移住相談システムの主な機能は、相談者のニーズや移住検討の熟度を判断し、回答を出し分けするほか、相談者のニーズに応じた対話の進め方や誘導パターンの種類を増やし、回答情報を大幅に増加した。AIが相談者の名前を呼んで話し掛けることで、親近感を醸し出す工夫や、イベント参加などでポイントがたまって特典が提供される制度もある。ターゲットに応じた各種SNSからAI相談窓口への誘導経路や、オンラインイベント経由などによる、AI相談から「地域の人や関係機関へのつなぎの接点」を拡充している。
 今後さまざまなデジタルマーケティングなどで登録者の増加を図り、利用状況などのデータを分析。回答の出し分け機能などを改善しながら回答数の増加を目指す。移住者の受け皿になる地域の人や企業がこれにどう応えるのか、成否を分けるポイントになりそうだ。経済界の取り組みなどを次号で紹介したい。

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