広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年1月14日号
マツダ頑張れ

100年前。新型ウイルスによるパンデミック「スペイン風邪」が猛威を振るった。世界で5億人が感染し、2000〜4000万人が死亡。日本では45万人が亡くなったという。再びいま、新型ウイルスの直撃を受け、世界中が大混乱。速やかにワクチンが威力を発揮し、事態収束を願うばかり。
 車産業は100年に一度の変革期といわれる。これにタイミングを合わせたように、東京は「都内で販売される新車について2030年までにガソリンエンジンだけの車をなくし全て非ガソリン車にする」目標を明らかにした。菅内閣は「カーボンニュートラルに向けたグリーン成長戦略」を打ち出し、50年までに温室効果ガスの排出をゼロにすると表明。ひろぎん経済研究所の水谷泰之理事長は、
「世界的に見ても自動車の規制を強化する動きが強まっている。特に自動車の世界販売で大きな割合を占めている中国、米国などでは将来的にガソリン車を完全に排除しようとする動きが広がってきた。日本勢を含む各自動車メーカーでは独自の電動化方針を掲げ、電動化を強力に進めている。今後、電動化の進捗度合次第では、自動車業界の勢力図が大きく変わることも想定される」
 県経済を引っ張るマツダは「30年までに全車種に電動化技術を搭載する」方針だ。協力企業は広域に裾野を広げている。電動化によって部品点数の増減などに大きく影響を及ぼすといわれており、新たな生産体制、技術を築くまでに時間的な余裕はない。パンデミックの年に創業し、100周年で再びパンデミックに遭遇。この間幾度も荒波をかぶり、厳しい苦境を乗り越えてきたマツダのたくましさ、技術力が試されることになり、しばらく目が離せない。先頭で変革期を突破するくらいの底力を発揮してもらいたい。
経営者に欲がない
 菅内閣での有識者審議組織「成長戦略会議」メンバーのひとり、デービッド・アトキンソンさん(小西美術工藝社社長)は、
「日本の人材評価は世界第4位だが、労働生産性は第28位と先進国の最下位クラスに低迷している。規模の小さい企業の多いことが一因。日本企業の平均規模は米国の約6割、欧州の4分3しかないからこそ、その分だけ生産性が低い」
 さらに日本の経営者は「お金に対する欲がない」という具体例として著書「日本人の勝算」で、
「ラーメン屋さんの社長の場合、人気が出ても3〜5軒の店を展開したら、それ以上に店を増やそうとしない人が多い。社長はベンツに乗れて、六本木で好きなように遊べる収入が取れるから、それ以上に店を増やそうという意欲がなくなる。まぁ、欲がないといえば、欲がない」
 と述べている。
 人材は優れているのに、経営者に欲がなく、規模の小さい企業が多く、そのため生産性が低いと指摘する。こうした意見を受け、菅内閣がどんな施策を打ち出してくるか、しばらく目が離せない。
 かつて「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とたたえられて日本式経営が高く評価されたこともあった。それもバブルだったのだろうか。

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