広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年7月1日号
全国一を目指す

激務にさらされる医師、看護師が少しでも安心して働いてもらえるよう、そして地域の医療崩壊を招かないよう、病院内を主力に事業所内保育園の受託運営で全国トップのアイグラン(西区庚午中)もいま、医療関係者らと共に戦う。コロナ禍がなかなか収束しない。24時間保育に携わる保育士らにも心身への負荷が、大きくのしかかる。
 命を預かる現場に寄り添おうと、認可園など含め全国464園とフィットネスジム17カ所の全社員約4500人に特別感謝金を5月給与に上乗せした。昨年に続く2回目。計4日のワクチン休暇導入と合わせ最大、総額約2億円の拠出を予定している。重道泰造社長(56)は、
「病院に働く医師、看護師、関係者の子どもを預かる院内保育園の重要性が高まり、医療を保育で支える気概で臨んでいる。必要な時間、求められる場所に安心して預けられる保育が機能して初めて、使命が果たせる。病院のほか、国の方針もあり、働き方改革や女性の活躍が進む産業界も多業種にわたって事業所内保育を採用する企業が増えている。人の役に立てるというモチベーションは大きい」
 有期雇用で保育士資格が取れる制度や、無料で全国の自社保育園やジムを利用できるなど福利厚生にも万全を期す。全国的に採用難の職種にもかかわらず応募、採用人数共に業界最多という。 
 もともと手掛けていたスーツケースのレンタル事業が米国同時多発テロで売り上げが急減。雇用を守るため2001年に始めた保育サービス事業は「待機児童」解消という社会ニーズに応じ、急速な全国展開を促した。昨年12月期決算で売上高164億円、経常利益12億円を計上。今期も増収増益を見込む。重道社長には全国一を目指す、強い信念がある。
「私自身が子どもの頃、共働き家庭で寂しい思いもした。いま、子を持つ身になり自分が預けたいと思える保育園の在り方を追い求めている。例えば、全園で地域の食文化を大切にしながら天然のだしや手作りおやつを提供。実際には手間もコストもかかる。しかし事業規模拡大によるスケールメリットを生かして収益が確保できれば、理想とする保育環境に近づくことが可能になる。親御さんや子どもを守り、雇用も守ることができる。決してきれいごとではない。保育をめぐる好循環を創り、やがて卒園した若者が日本の将来を担うようにと夢を描いている。困難かもしれないが、1000億円企業の目標こそ新しい境地を開くエンジン。今後も理想に向かって走り続ける」
 一人親で乳幼児を抱えながら働くケースが増えているという。仕事、子育てに奮闘する親を支える、日本一の応援団を自負し、子らの成長を温かく見守る保育を志す。事業を始めて間もない頃、昼夜働く保護者から、父親のいない3歳と5歳の男の子を預かった。重道社長自ら保育園まで送迎する途中、夕暮れの公園で一緒に遊んだという。
「1日1万2000人の乳幼児を預かる。いろんな家庭がある。生まれてよかった、生きる価値があると自己肯定できる人に育ってほしい。全国の保育が必要とする現場をしっかりと支えることが、私の一番の仕事です」

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