広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年7月22日号
凄いと言うほかない

大谷翔平は宇宙人なのか。テレビ中継でアナウンサーが「オオタニサーン!」と絶叫し、凄(すご)い勢いでまくし立てている。ポンポンと飛び出す大きなホームランに興奮しているのだろう。野球少年そのままの明るさがあり、どんな猛者もかなわない。カープの憂さも晴らしてくれる。
 厳しい金融界にあって、凄いと言うほかない。来年5月で創立70周年を迎える広島市信用組合は2021年3月期決算で、金融機関の収益力を示すコア業務純益が過去最高になり、101億円を計上。19期連続増益を達成し、今期も記録更新が確実という。
 10年前に比べて貸出金残高は倍の約6478億円。預金残高は倍以上の約7446億円。日本格付研究所(JCR)は5月11日時点で、同信用組合の信用格付を「A(ポジティブ)」へ格上げ。全国の信用金庫254、信用組合145にあって堂々の3位。JCRはこう評している。
「資金量約7000億円。経営トップの強力なリーダーシップのもと、経営資源を預貸業務へ効率的に集中させ、スピーディーに融資可否の判断を行えることが強みになっている。こういった当信組のビジネスモデルに対する評価や収益力の高さなどが格付を支えている。コロナ禍が長期化した場合には、ミドルリスク先を主要な貸出先とする当信組の与信費用にも相応の影響を与える可能性がある。もっとも、コア業務純益は堅調に推移しており、厳しい環境下でも与信費用はコア業務純益で十分に吸収可能な範囲内に収まるとみている。これまで格付を制約していたコア資本比率は着実に改善してきている。今後も持続的に改善していく公算が大きい」
 新店開設や店舗リニューアルを契機に顧客開拓を強化したこと。足元では新型コロナの感染拡大の影響を受けた事業者への資金繰り支援を積極化したことなどが寄与し、貸出金残高は比較的速いペースで増加。保有株式や債券にかかるリスク量は資本対比でみて限定的など、まさに「本業特化」を推し進めてきた経営方針を評価。同信組にとってこれから先の確信になったのではなかろうか。
 役職員の待遇改善も急ピッチで進めた。全国の金融機関に先駆け、5年前に定年を60歳から65歳に延長し、併せて役職も維持。初任給は段階的に引き上げ、例えば4年生大学卒で21万7000円。金融機関で群を抜く。応募者が増え、優秀な人材が増え、業績が伸び、待遇改善という好循環の軌跡を描く。
 派閥をつくるような人は役員に不適格です。即座に役員を辞めてもらいます。徹頭徹尾に取引先目線、職員目線のシンプル経営を貫く山本明弘理事長の持論だ。
 1968年に入組。35歳で三篠支店長に抜擢(ばってき)された後、中広、出島、可部、商工センターの支店長を経験し、本店の営業部長、審査部長から常務理事、専務理事、副理事長を経て、2005年に理事長に就く。出世街道を駆け上ったその履歴の裏側で挫折感を味わったことや、融資案件をめぐり上司と衝突したこともしばしばあったが、「取引先のため、市信用のため」と一歩も譲らなかった。「継続」を経営信条とする山本理事長の現場主義、本業特化の真の狙いなど、次号で。

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