広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年9月2日号
楽しいことが一番

見えないものを見抜き、何より楽しい売り場にする。 
 関東以西に玩具店「ホビーゾーン」を展開する冒険王(安佐北区可部)の前5月期は売上高56億8679万円、経常利益4億358万円と大幅に伸ばし、共に過去最高を更新した。テナント出店する商業施設で休業や時短営業が続き、厳しい営業環境にさらされたが、これまでの小型店を統廃合し、大型化した出店戦略が当たった。店舗効率や生産性が格段に向上し、全65店が全て黒字という。
 来年9月で30周年。20代以上の男性を主力ターゲットにミニ四駆、カード、ガンダムプラモデル、フィギュアなどを扱う。堀岡洋行社長は、
「これまでに何度も浮き沈みを経験した。既に出回っている情報やデータに頼るのではなく、徹底して現場のリアルに向き合う。本当に求められているものは何か。これをつかむことがいかに大事か、痛いほど身にしみた」
 もともと父親が経営していた家具店で家族連れが品選びの間、子供たちにおとなしく遊んでもらおうと玩具を用意したのが始まり。そのうち販売するようになり、玩具事業部を担当。しかし父親の引退を機に独立し1992年、冒険王を設立した。順調に多店舗展開していたが、大手のトイザらス進出で売り上げは大幅にダウン。そこで品ぞろえを絞り競合他社がまねのできない強みを発揮するコアコンピタンス経営に転換。家族や奥さんとショッピングセンターに同行すると大人の男性の居場所がないことに気付いた。2001年の松江サティ内を皮切りに、新業態ホビーゾーンを商業施設へ出店する戦法に切り替える。
「玩具業界は、少子化や家電量販店などの利益を求めない玩具の販売手法で苦戦を強いられている。一時は隆盛だった節句人形も衰退。鍵を掛けず近所に出掛けても平気な時代だったにもかかわらず、国内初の警備会社を立ち上げ、業界をけん引した企業の考え方がヒントになった。将来を見据えて本当に求められているニーズに頭をめぐらす。市場の変化を見極め、見落とされているニーズを見抜かなければならない。どの商いもここが勝負だと思う」
 一時、ネット販売にも乗り出した。しかし価格競争に魅力はなく撤退。巣ごもりで好調なジグソーパズルなど独りでも、家族や仲間とでも楽しめる商品をそろえる。プラモデルをつくる時間が増え、道具の一つ、1万円のハサミが売れるという。店舗では1時間ごとの売り上げをチェックし、マーケットの変化に機敏に対応する一方、変えてはならない玩具店の存在価値に磨きをかける。
「玩具店には何より楽しさがなくてはならない。来て見て触って楽しんでもらい、顧客同士のコミュニティが醸成された店は強い。100人100色の来店客に満足してもらう接客を心掛けている。かじ取りを間違えたら倒産。その責任は全てトップにある」
 今期は群馬や愛知、千葉、埼玉のイオンモールへ新規4店、増床5店、退店3店を計画。店舗売り上げを1億円に引き上げ、売上高63億円を目指す。来年6月には最大規模の店をイオンモール水戸内原店に予定。関東攻勢に備えた準備を進め、全国制覇を視野に置く。

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