広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2021年9月23日号
人は城、人は堀

なかなか人が来ない。入ってもすぐ辞めてしまう。警備業のテイケイ西日本(中区東白島町)は長年抱えてきた課題をど真ん中に据え、同時並行して人材確保と営業・教育改革を断行。これが強力なエンジンになり、前5月期決算で過去最高の業績を上げた。
 警備業法で定める雑踏警備はコロナ禍で大型イベントが軒並み中止になり、打撃を受けたものの、売上高は前期比約16%増の27億円超、経常利益は同1.5倍以上の1億7600万円を計上。4期連続の増収増益とした。
 高速道路や夜間規制、鉄道などの収益性の高い特殊警備を強化する営業戦略へ転換を図り、その受注体制を整えるため、大胆に手を打った。海田英昭社長は、
「機械警備を主力とする全国大手とは異なり、当社は人材で成り立っている。しかし、これまでは定年後の60〜70代や若い単身男性が多く、離職率は高かった。どうすれば定着してくれるかと根っこから考えた。安定した収入がある、将来の生計が立つ、やりがいがある、みんなのための職場にする。明確な目的を掲げ、一連の待遇改善や福利厚生を拡充。次第に30〜50代世帯者の応募が増えてきた。モチベーションが高まり、業績を押し上げる好循環を生み出すようになってきた」 
 4年前から特殊警備を本格化し、人材の確保、育成に必要な投資を積極的に行った。人は石垣、人は城、人は堀。いかに堅牢な城を築こうと、人が去ると滅びる。信玄の言葉だが、現代の企業経営も人の心が離れると潰れる。
 地元の金融機関に勤めていた縁で同社に請われ、2016年に社長に就く。社員一人一人と向き合った。真剣に耳を傾け、語りかけることから始めた。30代後半に大病。その時のつらい経験が寄り添う気持ちを醸成させた。これまでは人の採用や配属先も営業所任せだったが、社長面談を行って本社勤務か、営業部門か、現場向きか、適材適所を徹底。配属が決まったら共にがんばろうと握手。中国地方へ営業網を広げる中、全18拠点に出向いて労をねぎらう。研修やあらゆる場面でみんなから要望を聞く。できることは即決速攻、できないことは猶予をもらう。必ず誠意を尽くす。会社の業績などに無関心だった社員が次第に歩み寄ってくれるようになった。
 これまでは中途採用が当たり前で年中募集、給与は勤務日数によって支給。これらを全て改めた。固定給とし、2年ほど前から総合職を導入。段階的に給与体系を整備し、年2回賞与、休業補償などのほか能力給の制度も設けた。新卒で国公立大生も入るようになり、20代女性も増え、離職率は大幅に改善した。
 原田博男会長が1977年に創業。勤務先の警備会社が倒産したため、同僚と機械警備を始めた。2年後に工事現場の交通警備に乗り出し、創意工夫を重ねて業績を伸ばした。営業先も広がり、2008年のM&A以降、売り上げは20億円強で推移していた。
 いまは交通警備が売り上げの8割だが、特殊警備がその半分を占めるまで伸長。今後は岡山、山口、鳥取県への進出を計画。24年5月期を目途にしていた売上高30億円を前倒しで達成する見込みだ。わが社に誇りがある。何よりも職場が元気と胸を張る。

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