業務用洗濯機で国内トップ級の山本製作所(尾道市)は米国を中心に海外展開を加速し、2027年に現在の約2倍の売上高100億円を目指している。目標達成に向けて果敢に設備投資し、もっか世界一の自動車メーカーのトヨタ式現場改善に取り組む。
山本尚平社長(64)は、
「社長に就任し、世界市場への挑戦を宣言してからはや20年。従業員は191人まで増え、23年の山波工場完成時には230人体制を見込む。これまで現場オペレーションや工場運営、品質管理などの改善を繰り返してきたが、世界で戦うにはまだ不十分。現場改善に終わりはなく、常に新しい課題にチャレンジしていきたい」
トヨタ生産方式に関する書籍を読みあさり、昨年の秋頃から同メソッドを採り入れ始めた矢先、トヨタ自動車のインドネシア法人社長を務めた伊原木秀松氏(72)との出会いがあり、8月から月に3日半の現場改善指導を受ける。ここ20年で会社売上高は約3倍の50億円にまで成長。競争力の源泉とされる内製化率は約95%を占め、正直なところ、ある程度の自信があった。さっそく伊原木氏に工場を見てもらい、
「絞ればまだ改善点が出てきますか」
と聞いたところ、絞らなくても水が出ると一喝。
まずは数万点以上ある部品の製造工程のフロー作成から始めた。例えば、洗濯機のドアにゴムを取り付ける作業では、どの指をどの角度で使って何㏄の接着剤を使うのか、何秒間押しつけるのか、誰が接着剤の量を測るのか。それら全てを決める必要があるという。また、前傾姿勢になる作業をした場合は何点と動作ごとに定め、点数が一定以上になると重労働と定義。
「世界で戦うにはここまでやらないといけないのかと驚いた。トヨタは2兆円を超える利益を稼ぐが、現状維持ではつぶれてしまうという意識が強い。世界最高のオペレーションシステムや考え方にじかに触れるチャンス。全てを吸収したい」
組織体制で品質管理の部署をつくるのか、迷って相談をすると、一つ一つの部品がしっかりしていればそんなものは必要ないときっぱり。顧客からのクレームは月に1度社内でフィードバックし、会議で原因究明と対策を行ってきたが「生ぬるい」と指摘されて全てやり直すことにした。相対的にクレームの数が減れば良いのではなく、完全にゼロにしないといけない。特にヒューマンエラーは許されないと徹底している。
「在庫が多いのは会社の欠点を隠す、マネジメント能力が低い証拠。そうしたひと言、ひと言が突き刺さる。トップが決めてやらされている会社も多いが、幸い、山本製作所は全員が目の色を変えて真剣に取り組んでいると評価してくれた。最初からトヨタと同じ事はできないと思いたくはない。生産性が上がって従業員の給与が上がるのが理想。一人一人のモチベーションを上げるため、人事評価システムについても更新中。業績と給与体系をよりリンクさせたいと考えている。外注の品質を高めるのは大変だが、弊社は内製化率が高く、内部で管理できるのが強みだ。尾道から世界へ。ワクワク、ドキドキしている」