広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2022年3月24日号
中央図書館の移転計画

図書館でゆっくり過ごせる街。好きな本を読みふけり、調べる、学べる。小さな子どもからお年寄りまで包み込んでくれる安心感がある。
 2025年春開業へ建設中の新駅ビルをはじめ、JR広島駅周辺の再開発事業が進展し、広島の玄関口が大きく変貌を遂げようとするさなか、福屋を核店舗とするエールエールA館8〜10階に中区基町の広島市立中央図書館や映像文化ライブラリー、こども図書館などを一体的に移転し、再整備する計画が動きだす。
 基本計画は25年度オープンを目標に、現在86万冊の収蔵能力を150万冊に引き上げ、A館10階に約15万冊の開架書庫や閲覧、自習スペースのほか、100席の上映ホールを設ける映像ライブラリー、9階には広島の文学資料コーナーや郷土資料館サテライト、8階に児童図書など約9万冊を備える子どもエリアなどの構想を描く。
 図書と映像エリアでは商用データベースの拡充などで企業や創業希望者へのビジネス支援強化などのプランも盛り込む。総面積は1.3倍の1万3000平方メートル。カフェ、自習スペース、飲み物を楽しめる閲覧空間、寝転んで本を読めるスペースや読み聞かせの場などを設け、各フロアを行き来し誰もが思い思いに楽しむことができるようにする。A館を管理運営する第3セクターの広島駅南口開発(南区)は、現在10階のジュンク堂に他の階で引き続き営業してもらうよう打診しており、同社から図書館誘致を歓迎するとの意向を受けているようだ。
 コロナ禍前の18年度の入館者数は中央図書館39万7000人、こども図書館20万9600人、映像文化ライブラリー3万8000人。再整備計画の概算経費は不動産取得費約60億円、建物整備費約35億円(書架設置費など含む)、引越費約1億円の計約96億円を見込む。
 駅周辺〜紙屋町・八丁堀の楕円形都心づくり構想と響き合って「誰もが学び、憩う平和文化の情報拠点」に位置付ける。スケジュールは新年度で基本・実施設計、23年度から床取得・再整備工事などを進め、25年度開館を予定。
 計画策定までの経緯は11年10月=旧市民球場跡地活用をめぐり、老朽化が進む中央公園内にある公共施設も含めた全体での検討を開始。12年11月=中央図書館、映像文化ライブラリー、こども図書館を合築して配置計画の見直しを行う空間イメージを公表。21年9月=市が中央図書館などの移転候補地の一つに駅周辺を挙げているとの発表を受けて駅南口開発は「絶好の機会」と捉え、A館を移転先候補として松井市長に要望書を提出。今年2月に市がA館へ移転することとした中央図書館等の再整備基本計画案を公表。市議会で付帯意見はあるものの予算承認され、一歩前へ踏み出した。
 近年、全国的に公立図書館が駅前にオープンするケースが増え、図書館利用者が大幅に増加。近隣では三原、周南市の例があり、岩国市も計画しているという。駅南口開発の山本茂樹総務課長は、
「駅周辺のエリアマネジメントの活動と図書館などの事業を官民連携で展開し、多くの市民や国内外からの観光客の誰もが楽しめる街づくり、にぎわい創出に相乗効果を上げていきたい」

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