広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2022年7月7日号
酌めども尽きぬ

にわかに日本酒が海外で人気を呼んでいる。昨年の輸出額はコロナ禍で落ち込んだ前年から66%増の401億円に上り、輸出数量は47%増の3万2053キロリットルと共に過去最高を記録。相手国は輸出額100億円を超えた中国が米国を追い抜き、初めて1位。次いで米国、香港向け。2013年に和食がユネスコ無形文化遺産登録を機に日本の伝統的な食文化が一躍、海外でブームになった。
 日本を訪れた観光客らの口コミで広がり、各国の主要都市に日本料理店が増えたことも日本酒の需要を大いに刺激したようだ。だが、国内では1973年の出荷量170万キロリットル強をピークに減り続け、昨年はピークの4分の1以下にまで落ち込んだ。
 この流れに立ち向かうかのように、酒商山田(南区宇品海岸)は〝日本の酒〟に特化した酒類販売の戦略を立てた。2022年3月期決算で前期比12%増の売上高10億2100万円、経常利益は23%増の3421万円を計上。小売り80%、卸売り18%、海外向けは2%に過ぎないが、2年前から輸出に乗り出し、前年比2.7倍と大きく伸びた。山田淳仁社長は、
「昨年夏、米国の事業パートナーと約2週間をかけ、定評のある9蔵元を訪ねた。土地柄や気候、歴史など銘柄にまつわる物語が酌み交わす場を豊かに彩り、味わいを一層深めてくれる。商品を売り込むだけでなく、物語を知れば興味や関心が湧いてくる。コロナ禍で海外へ日本酒文化を発信する活動は足踏みしたが、いまはオンラインで個人や企業と面談を重ね、現地パートナーの発掘を進めている最中。国ごとに日本酒の発信力を高めていきたい」
 実働する酒蔵は全国で約1000と言われ、うち95%以上は中小や個人の蔵。工業製品ではない、小さな蔵のこだわりや酒造りにかける情熱を丁寧にすくい上げることが、日本の食文化を支えることにつながる。海外のワインやウイスキー、ビールなどに勝るとも劣らない日本酒の魅力を知ってもらう。酌めども尽きぬ酒の魅力を国内外へ発信するサポートこそが、わが社の使命と言い切る。
 酒類業界を盛り上げ、酒屋を復活させたい。その信条から、酒屋向けのオリジナル酒を相次ぎ商品化している。全国の蔵元を訪ねて選りすぐった逸品銘柄に、提携デザイナーと組んで新しい魅力を付加したシリーズ「コンセプトワーカーズ・セレクション」(CWS)や、ワイン樽で熟成させた新感覚の日本酒「FUSION」、酵母の香りから想起する果物をラベルにデザインした新酒シリーズなど。ラベルコレクターも現れているという。一方で、9月末に西武池袋本店に直営で出店する。酒商山田の店づくりに勝算をみた西武担当者から取引先の蔵元経由で、酒売り場を任されることに。初の東京進出だ。今期は売り上げ14億円を見込む。31年の創業100周年に臨み、新たに〝独創的価値共創企業〟のコンセプトを打ち出す。
 目には青葉、山ほととぎす初鰹。初モノを喜ぶ江戸っ子に限らず、全国各地、四季折々の旬の味わいは格別。いまならパリッと塩を利かせた焼き鮎に、切子の猪口(ちょこ)をひんやりと満たす冷酒がいい。日本に生まれてよかったと思う。

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