広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2022年8月11日号
都市の構え

ロシアのウクライナ侵攻、国の安全保障や新型コロナ感染拡大、物価高騰、エネルギー資源などをめぐり、混沌とする世界情勢。そんな折、来年5月19〜21日の日程で「G7広島サミット」の開催が決まった。
 大国の米中対立を軸に、果たして世界情勢はどう動いていくだろうか。広島サミットはその時、世界から大きな関心を集めるだろうが、広島にとって、その後のことも大いに気になる。観光客誘致の起爆剤になり、市民レベルで都市の在り方などが問われることになりはしないか。
 歴史は繰り返すという。20年近く前。広島市公共事業見直し委員会(地井昭夫座長=広島大学大学院教授)は、南区出島地区に建設を計画する国際会議場・見本市(メッセ・コンベンション)施設整備など5件を「中止」とする中間報告をまとめた。メセコン基地について「経済社会情勢などから緊急性が低い。料金収入の考察が不十分で、将来の維持管理費等の負担が大きく経営見通しが不十分」との理由を示した。散々である。当初での計画があまかったのか、計画後に情勢が変わったのだろうか。
 いま出島地区から西区商工センター地区に建設候補地を移し、国際会議などの開催施設「MICE(マイス)」整備の構想が動きだした。広島総合卸センターなど20団体・413社でつくる広島商工センター地域経済サミット(伊藤学人会長)は、MICE施設誘致を核にした「西の玄関口」街づくり構想をつくり、7月29日、広島市の松井一実市長にその提案書を手渡した。
 これを受けて、松井市長は「官民連携で商工センターの街づくりビジョン策定作業に入り、2024年度に完成させたい」と応じ、一歩踏み込んだ。どうやら実現へ向けた道筋がつきそうである。
 街は古くなった建物を建て替え、新しい街へと変貌を遂げてきた。広島の玄関口、広島駅周辺では長い歳月を要して再開発計画が進展し、いまや高層ビルが建ち並ぶ。経済サミットはこれから先を見据え、広島の「西の玄関口」として名乗りを上げた。やはり卸団地の組合施設や組合員所有施設の老朽化などが発端になった。2年をかけ、このほどまとめた「組合街づくり事業」のはじめ(要約)に、
「高度成長期に誕生した卸団地組合は、約半世紀の歳月を経て、新たな転換期を迎えている。卸業界は中抜き現象、通販の台頭、大手スーパーの寡占化などにより経営環境は大きく変化し、年間販売額・業者数は大きく減少。構造不況業種の倒産や業種転換による組合からの転出から、組合員は減少の一途をたどる。さらに組合施設や組合員所有施設は耐用年数が到来し老朽化が進んでいることや、現状の経営形態に合った施設の在り方が求められている」
 16年に設立40周年を迎えると同時に活性化策を発表。六つの取り組むべき施策を決定し、このうち「組合員施設の更新」「人作り〜ビジネススクール」「防災・防犯対策」「景観事業」の四つは既に事業化し、それぞれ成果を挙げている。残る二つの「流市法の緩和・廃止」と「中小企業会館・展示場の更新」は、街づくり議論の中で解決に向けた方向性を見いだすことにより、全て出そろう。次号へ。

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