広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2022年9月1日号
志をつなぐ

もとは海だった。広島の復興を引っ張った初代の公選広島市長、浜井信三さんが伊藤学さんの家を訪れて二人で高須の裏の山頂に登り、そこから井口と草津の沖を指し、
「あの向こうの津久根島を含めて埋め立てしたい。いま、榎町や十日市方面にある中小企業は道路ぎりぎりまで使って社屋を建てている。荷物の荷さばきは全部道路でやるので、大変危険な状態にある。そうした中小企業は、広い場所に移転させたらどうかと思う。飛行場もつくりたいし、大学も移転統合する必要がある。そうしたことで土地がいくらでもいる」
 西区商工センターの広島総合卸センター初代理事長を務めた伊藤さんが回想録でこう述べている。もう七十数年前の話だが、これが西部開発構想の始まり。総事業費1000億円を投入し、328ヘクタールを造成。市で戦後最大級のプロジェクトだった西部開発事業は1982年に完成し、今年で40年になる。いま団地再開発構想が動きだした。7月29日、その計画書を松井市長に手渡した卸センターの伊藤学人理事長は中小企業会館の更新と流市法緩和地区の街づくり構想の巻末で、
「われわれが持っているものは提案書であって施工書ではない。これを市長に投げかけるということはこれを参考にしながらこの地域をどう活性化してもらえるのかというボールを投げることになると思っている。これが100%実現するとは思っていないが、これに近いものを考えてもらうべく、市には要望していこうと考えている」
 親子で志をつなぐ、壮大なライフワークになった。
 大きく二つのテーマがありその一つ。広島サンプラザとその周辺を建設候補地とする「MICE(マイス)関連施設」はメイン展示場約6000平方メートル、ホテルなど。延べ床約3万4500平方メートル。隣接のメインアリーナ約2500平方メートル、観客席は8000人に対応。建築面積約1万2000平方メートル。新たなBリーグのアリーナ(ドラゴンフライズ本拠地)と展示場、ホテルなどを整備することでスポーツのほか、学会などの大会やコンサート、展示イベントが開催できるようにする。
 中小企業会館・展示場を建て替える「アクティビティセンター(イノベーションハブとしての活動センター)」の共創事業プラットホーム=ワーククラブシェアオフィス、ギャラリーホール、コラボスタジオ、カフェ、コワーキングスペース、研究開発工房など延べ床約4900平方メートル。新たなループ型事業ハブ=200万人広島都市圏自治体のサテライトオフィス、西の玄関口の街づくり会社、地域医療センター、ローカルアンテナショップ・市場、クリエーターズハウス、コワーキングスペース、シェアオフィス、卸センター事務局など延べ床約6200平方メートル。
 Aゾーン(2〜3丁目の約10万平方メートル)=通称「アジト通り」を対象に街づくりイメージを描く。建て替えによる商業化と高度利用を目指して主に来訪者らの歩行に配慮した道路に再整備するA案。物流等の業務に配慮した道路と建て替えの高度利用による再整備のB案を検討。
 世の動きが早く、数年先さえ容易に見通せないが、志がなければ取り残される。

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