広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2023年1月12日号
ユニコーンはいるか

5月にG7広島サミットがある。世界から注目され、より世界を意識する新年になりそうだ。広島経済界も激動する世界情勢にどう立ち向かうのか、企業経営者の真価を発揮するチャンスである。
 獰猛(どうもう)で、他の生き物を傷つけたためノアの方舟から降ろされたユニコーン。一方で人を幸せに導くという伝説もある。額に1本の角を生やしたその生き物になぞらえ、米国や中国で脚光を浴びるユニコーン企業に触発されたのか、日本でも将来のユニコーン企業を発掘しようと躍起だ。
 米国のベンチャーキャピタル創業者が2013年ごろからユニコーン企業の造語を使い始めたといわれている。創業10年以内、時価総額10億ドル以上で、未上場のベンチャー企業を指す。投資先として巨額の利益をもたらす可能性に目をつけた。内閣府資料によると22年7月時点でユニコーン企業は世界に約1000社あり、うち米国633社、中国173社、日本は10社以内にとどまり、圧倒的な差である。チャンスと見るや一気呵成(かせい)に殺到し、何が何でも物にしようとする米国、中国に勇猛果敢な起業化精神があるのだろう。失敗を恐れて、起業するより大手に入る安定志向が強い日本の若者気質との差は大きく、さらに投資環境の違いなどから遅れをとっているのであれば、この岩盤をどう突き崩すのか。日本流の得意技を生かしながらひと工夫する、腕の見せどころではなかろうか。
 広島県は「ひろしまユニコーン10」プロジェクトを推し進める。向こう10年でユニコーン企業に匹敵する10社を創出する目標だ。昨年11月中旬に伴走型支援を行う「スタートアップアクセラレーション」挑戦者として12社を採択した。ベンチャーキャピタルや先輩起業家による個社ごとの面談や、早期成長を促すための「ファイナンス」「オープンイノベーション」勉強会ほか、投資家や事業会社とのマッチングイベントなどを計画する。
 その挑戦者はまだ一般的になじみの薄い、カタカナ社名の会社が多い。事業計画は宿泊施設の予約管理からマーケティングまでの一体的DX、マリーンレジャーなどの情報共有アプリ、予防医学に基づくスイーツ開発、訪問介護と高齢者向けIoT活用ヘルスケア、産業利用に適したゲノム編集とバイオDX、ECなどで訴求する動画作成ツールを一気通貫で提供といったテクノロジー開発や事業化をもくろむ観光、医療、環境分野などに及ぶ。3月に成果発表会を予定。挑戦者にとってワクワクドキドキする年が始まった。折に触れて成長の軌跡を本誌で紹介したい。
 こうした動きに先駆け、1989年設立された中国地域ニュービジネス協議会(内海良夫会長)は新たなビジネスチャンスに挑戦する企業の支援活動を続けている。従来とは違った発想、知識、技術などが得られるよう多種多様な異業種企業との出会いの場を提供し、化学反応を呼び起こす仕掛けだ。昨年秋、ニュービジネス大賞30周年記念誌「風」を発刊した。第1回の中村ブレイスから30回のまつえペイントまで受賞事業の現在、新しい事業、座右の銘などを紹介しながら経営のエッセンスをまとめる。その秘訣など次号で紹介したい。

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