広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2023年1月19日号
人生の主人公

新しい芽を大きく育てていくため、中国地域ニュービジネス大賞の表彰制度を創設。同協議会の内海良夫会長(データホライゾン社長)は、
「受賞企業の事業内容はさまざまだが、社会や人、時代が何を求めているのか、ここに着眼した経営者の熱い思いがあり、本気で立ち向かった軌跡がある。全ては自分が源という覚悟が大切だと改めて気付かされる」
 将来を語り、ビジョンを実現させる情熱と能力を備え、世に役立つ気構えが根底にあると言う。過去30回のうち広島市内企業では、▷ダイイチ=インターネット利用による洋書販売、▷データホライゾン=保健事業支援システムとレセプト監査システムの開発・販売、▷テクノクラーツ=次世代アンダーカット形成ユニット装置「すっぽん」の開発・販売、▷アイグラン=サービス業の視点を取り入れて保護者ニーズに応えた保育事業の展開、▷福徳技研=ASRや塩害で劣化したコンクリート構造物の補修技術、▷キャンパスメディコ=固定化抗菌剤EtakとL8020乳酸菌特許によるライセンシングビジネスの展開。それぞれ成長を遂げている。株式上場の目標を立て、実現したデータホライゾンはレセプト解析技術を得意技とし、社会が求める医療費適正化とQOL向上に照準を合わせてデータヘルス関連サービスを全国展開する。しかし内海社長は創業から十数年は〝ボロボロ会社〟だったと話す。
「入社後ようやく仕事を覚えてやっと戦力になったと思ったら会社を去っていく。この間休みなく働き詰め。例え社員の倍以上を働いたところで状況を一変させるほど力はなくあくせくするばかり。その頃、一倉定先生の社長学セミナーに参加したことが重大な転機になった。社長の仕事はどうあるべきか、事業経営における原理原則などを根本から学び直し、これを実践することに全力を傾けた。業績は好転し方向性が定まった」
 世の中が何を望んでいるのかキャッチし戦略を立てる。自然界に、水は高い所から低い所へ流れる原理原則があるように事業経営も外してはいけない原理原則がある。これを残らず実践していくうちに「出会い」の運も引き寄せたと明かす。さらに医療費適正化とQOL向上を突き進めようとインターネット関連大手のDeNAと資本・業務提携を締結。医療ビッグデータの二次利用も視野に入れながら新たな市場創出へ挑戦を始めている。
 同協議会は、経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラムで中国エリアを対象とした「J‐Startup WEST」事業の事務局を中国経産局と共同で新年度から本格始動する。4月中旬に関連イベントを開く予定。ユニコーンや大学発ベンチャーを発掘し支援する。世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を育み、革新的な技術やビジネスモデルで新しい価値の提供を目指してもらう狙いだ。
 内海社長はニュービジネス大賞30周年記念誌のはじめに「自己が 自己を 自己する」という禅語を紹介している。道元の経典「正法眼蔵」にある言葉で「私たちが今見ている世界は私たち自身・自らが考え、作り出し、そしてそれを自分自身で眺めているだけだ」と訳す。全ては自分が源。「自分の人生の主人公になる」という決意をその言葉に込める。起業家へ伝えたい勘所なのだろう。

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