看板サイン、広告塔、店舗内外装などを企画、設計、製作、施工するウエル・ユーカン(佐伯区湯来町)が3月で創業50周年を迎えた。ユニクログループ、トヨタ系ディーラー、ドン・キホーテ、ソフトバンク、大創産業、ツルハグループなど全国へ店舗展開する大手チェーンの“顔”ともいえる看板を製作し、信頼を築く。
掛宗智(かけむねとも)社長の父・常夫さんが1973年、中区白島で関芸(現ウエル・ユーカン)を創業。安佐南区に工場を構えていたが、その後に業績の拡大とともに移転集約しながら現在は、本社を置く湯来町の芸南テクニカルセンターと、廿日市市の県営佐伯工業団地内の安芸テクニカルセンターの2工場を設ける。大型看板や大量受注もこなし、企画段階から施工まで手掛ける一貫体制を敷く。
2019年12月期決算で売り上げ68億円を計上。翌年からコロナ禍の影響を受け、2期減収となったが、22年度は3期ぶり増収に転じ、前期比31%増の売り上げ59億5700万円を計上。営業利益は45%増の8億6800万円で増収増益だった。看板広告市場は屋外向けが3000〜4000億円で推移し、全体では6000億円規模と推計されている。同社は、業界の“壁”とも言われてきた売り上げ50億円を突破して業績が安定してきたのを見極め、「市場開拓の余地は大きい」と成長戦略を描く。
納期厳守や品質はむろん、きめ細やかな要望に応えていくために直接受注を選択。創業時からこの受注体制にこだわってきた。まだ生産体制が小規模だった頃は、納期に間に合わせるために夜を徹して製作し、ようやく朝を迎えて現場に納めることも少なくなかったという。オーダー通りにつくるだけでなく、必ず設置現場まで足を運んで実測した。市町村ごとに異なる屋外広告物条例に関わる設置申請手続き代行から年中無休365日の体制で全国対応するアフターメンテナンスまでを一貫して取り組むことにより、何より大事な顧客の満足と信頼を引き出した。
自社工場を持つことで低コスト化を図り、品質維持を徹底。技術の向上へ絶え間なく挑戦を続けてきた。今後は人材の確保〜育成、全体的な組織力の強化、将来の核となる新規取引先の開拓と受注増をこなせる設備増強などを課題にあげる。
1994年に開設した東京営業所(現・東京支店)を皮切りに97年に大阪、98年に福岡へ順々に営業所を設け、全国的な営業ネットワークを構築する。経営コンセプトに掲げる「DECSS(デックス)」は、
▽ディスカウント=低価格の追求、▽エモーション=感動・ワクワク感・新発見・驚き、▽クリエーション=創造・新しいスタイル、▽セキュリティー=安心、▽スキルフル=巧み・品質向上ーの英語の頭文字から取った。
創意・工夫・実行のシンプルな指針を基にオンリーワン企業を目指す。二つのテクニカルセンターは最先端の機械設備を整え、長年培ってきた高度な専門技術を持つ職人がそろう。掛社長は、
「創造や新しいもの造り、技術の向上は仕事に限りない夢を与えてくれる」
2020年12月に亡くなった創業者常夫氏の遺志でもある「取引先の立場に立って誠実」を重ねた50年の実績と信用こそが同社にとって一番の財産なのだろう。