広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2023年5月11日号
新紙幣が改革促す

渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎。来年の上半期に発行が予定される新紙幣の顔ぶれだ。偽造を防ぐホログラムや視覚障害のある人も識別しやすいユニバーサルデザインに高度な技術を採用。新紙幣に対応すべく自動販売機をどうするのか。現金決済する先々でキャッシュレス化が進むと予想されており、時間貸し駐車場もその対策を急ぐ。
 広島でいち早くコインパーキングの運営・管理事業に参入し、全国展開しているアサヒエンタープライゼス(中区橋本町)は、新紙幣への対応費用を試算したところ億単位に上ることが判明。今後を見据え、新たな収益を生まない投資に妥当性はあるのか。少子化の加速や車離れなどの影響を勘案すると、旧態依然としたコインパーキング運営はやがて街中から姿を消していくのではないか。同社取締役の先川紀之さんは、
「新紙幣は、時間貸し駐車場の在り方を問う良い機会を与えてくれた。従来のサービスは運営側の都合に寄っているように思う。利用者の立場に立ったサービスとは何か、みんなで真剣に考えた。そうして精算手続きを必要としない〝0秒精算〟のアイデアが生まれた。そこからストレスフリーのAIパーキングを運営管理するシステムRakuーPを開発し、特許を取得。駐車場の運営会社などから問い合わせが殺到している」
 会員登録すると、AI搭載の監視装置が車のナンバーを読み取り、自動でクレジット精算。非会員は装置モニター上のQRコードによってペイペイなどでオンライン決済できる。用地さえあれば従来のロック板や集中精算機などは不要。昨年6月から市場投入し、順調に稼働している。
 AI搭載の駐車システムとは異なり、前払い方式でQRコードを看板に掲示するだけの「RakuーP LIGHT」も好調に滑り出す。これを受け、昨年10月に朝日洋光取締役、プロダクト開発などのオーダー・ジャパン(中区)の杉本正彦社長らが参画し、システム開発運営の新会社「RakuーP」を設立。CEOに朝日取締役、先川さんはCOOを兼務。新会社のミッションに「移動が楽しい世界にする」と掲げた。もともと土地活用サービスとして市場拡大した時間貸し駐車場は街中で車のアクセス手段として欠かせない。さらに発想を発展させて街から街へ、都心から地方へと移動を促す新たな機能拠点となる未来へ向けた構想も描く。まずは認知度アップへ、向こう3年内にRakuーP2万台分、同ライト1000カ所で1日当たり10万人の利用を目指す。
 5月中には新アプリにも対応。精算に要るQRを読み込む手間が省け、駐車場検索などもできる。利用履歴は利用・運営者双方に価値あるデータとして提供。監視装置のポールは今秋には1200台を製造予定。広告や地域情報などの発信機能を持たせて付加価値を高める。先川さんは、
「ラクピー事業成立の前提となるキャッシュレス精算に限定する方法がよいのか決断に迷ったが、目的地に行くためだけの駐車場から脱し、人が動き集まり、楽しさを生み出す拠点を目指すためには必要と判断した。当社だけが勝ち組になるビジネスモデルではなく同業他社や異業種も巻き込みながら、まちづくりに少しでも貢献したい」
 代理店方式で全国展開を目指す。新紙幣から生まれた駐車場のイノベーションがどんな進展を見せるだろうか。

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