広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2023年6月8日号
広島のプライド

被爆地で初めて開かれたG7サミット。戦争当事国ウクライナのゼレンスキー大統領も参加し、国内外から注目を浴びた。世界にどんな影響をもたらすだろうか、今後の動きを見守りたい。
 地元経済界が主催し、5月18日〜6月11日に「Pride of Hiroshima展」を旧市民球場跡地ひろしまゲートパーク大屋根ひろばで開いている。広島の戦後復興から現在、未来への展望を広く知ってもらおうと企画した。マツダ、イズミ、エディオンなど26社が当時の製品やパネルを設置。マツダは戦後生産した三輪トラックを置く。説明文に、
『終戦直後の混乱の中、ある者は復旧ままならない鉄道を乗り継ぎタイヤを求めて九州へ出向き、ある者は燃料タンクを譲り受けて鉄板を切り出した。希望が実を結び、1945年12月に10台の三輪トラックを生産した。戦後わずか4カ月後のことであった』
 同社100周年史に戦後の印象深いエピソードを記す。
『本社敷地内の付属医院は負傷者であふれ、生き残った社員は悲嘆と虚脱を振り払い、負傷者の介抱にあたった。倉庫の医薬品はすべて提供し、食堂や寄宿舎を開放。比治山が壁となり壊滅を免れた同社社屋を間借りしたいと、県庁や地元企業から相次いで要望があり、自社の操業再開にも目途が立たない状況であったが、社長の松田重次郎は二つ返事で受け入れた。決して広くはない社屋に官民入り交じって人々がひしめき合う。困ったときの助け合い。人の心のごく自然な振る舞いだった。焼け野原になった町を見つめる重次郎にとって、この奇跡だけが希望の光だった。この出来事を境に、東洋工業(現マツダ)と郷土広島とのきずなは、揺るぎないものになっていった』(要約)
 みんなが力を合わせて復興の原動力を生み、資材輸送などを下支えしながら経済再生につなげた。海外向け三輪トラックのパンフレットに「a pride of Hiroshima」と自信を示し、その鮮やかな文字が目を引く。丸本明社長は、
「復興を担った人たちの生きざま、企業の姿は今の私たちへの叱咤激励に聞こえる。戦後間もなく地元の主要企業が二葉会を立ち上げ、カープ設立に出資。市民がたる募金で支えた市民球場跡地でこうした展示を行う意義は大きい。伝え続けたい」
 オタフクソースが再現した戦後の屋台、食糧需要に応えたサタケの精米機なども展示。広島商工会議所会頭の池田晃治実行委員長は、
「絶望から明日に向かい、一丸となって成し遂げた姿は誇らしい。ウクライナの人道支援を目的に、来場者からツイッターで感想や平和のメッセージを投稿してもらうたびに実行委員会から日本赤十字社に100円を寄付。双方向性の波及を期待している」
 松井一実市長は、
「展示内容は英語併記で外国人にも伝わりやすい。インバウンド増加が予想される中、イベント終了後も広島駅やバスセンターなどに設置してもらえないか、検討したい。過去を知り生かせる場所や動機付けの機会を街の至る所につくることが、市役所の使命だと思う。サミット各国首脳に慰霊碑に刻まれた言葉を説明した。被爆した方々は自分たちのような経験を誰にもさせてはならないという強い思いがあり、個人を超えた人類愛に及ぶ。争いの悪循環を断ち切らなければならない」

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