ロシア・ウクライナ戦争で東西の溝が深まり、グローバルサウスも各国の思惑の中で綱を引き合う。日中関係は原発処理水の放出を機に日本製品の不買運動が起きた。国際経済は一段と混迷の様相を強めており、マツダはどんな戦略を描いているのか、最重点とする米国市場の現状と将来展望を聞いた。
顕著な変化が現れている。2018年度から販売台数構成比で米国が中国を再び上回り最多の27%を占める。米国法人のCEO時代(16年から5年)に手腕を振るった毛籠(もろ)勝弘専務が6月に社長昇格。米展開を加速する。マツダノースアメリカンオペレーションズの梅下隆一副社長は、
「都市部を中心にマツダ車が強い、または強くなるポテンシャルのある39地域に力を入れていく。プレミアムブランドに肩を並べられる店づくりの決意を示し、これに共感してくれなかった264店に退出していただいた。一方で賛同してくれた174店が新規に加わる。全545店のうち既に半数の272店が次世代店舗への移行を完了し、着手済みや予定を含めると369店に及ぶ。しっかりと運営してくれている地方の小規模店にはもともと無理な改装を依頼していない。販売台数ベースで全米の約9割を次世代店舗が担う計算だ。トップブランドの領域に近づいてきたと自負しており、今後もマツダの理念を伝えていく」
人気の高いSUVを相次ぎ投入し、今年4月に発売した大型SUVのCX-90に続き、来春には同70を発売する予定だ。魅力的な車両と店舗を打ち出し、これまで販売店が値引きに充てることの多かった販売奨励金を抑制することで〝稼ぐ力〟を高めた。結果として、22年の米国市場の車両平均取引価格は18年に比べ約7000ドル増え、3万3700ドルに伸長。
「販売奨励金の抑制は業界の中で上位にある。新車購入者は数年後に手放す際に高値で売却しやすくなり、ブランド価値が上がっている。長年の課題だったマツダ車の再購入率は着々、業界平均に近づいてきた。高価格帯のCX-90の手応えがよく、当面は平均取引価格が上昇すると予想している。最大年産15万台のアラバマ工場稼働や新型車の投入など、成長加速へのピースがそろった。第3〜第4四半期でフル生産に近い状態へ持っていく」
本年度の販売は前年度比22%増の36万7000台、25年度に45万台を掲げ、同社が参入する車種分類で現在のシェア4.9%から6%への拡大をにらむ。マイナス要因に働く政策金利の引き上げなどの動きも予断を許さない。北米で組み立てた車などを条件に、EV(電気自動車)税優遇も始まった。22年のEV販売台数(全メーカー)は前年比6割増の81万台で、全体の約6%に。しかしマツダはこの流れと一線を画し、カリフォルニア州限定で試験販売していたMX-30のEVモデルの扱いを終える。
「ロードマップに基づき、27年ごろにEV専用の新型車を予定するが、必ずしもEVでトップランナーになろうとは思っていない。一部の州を除き、まだ米国政府の見立てほど市場が活発化していないと思う。まずは来年発売するプラグインハイブリッドの反響に期待したい」
充電インフラ整備や環境規制の実態は各国さまざま。補助モーター含め、多様な電動化技術を使い分ける独自の戦略を描く。