広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2023年12月21日号
矛盾にメスを入れる

広島からユニコーン企業が現れるだろうか。昨春に「ひろしまユニコーン10」プロジェクトを立ち上げた湯崎知事は「広島からユニコーンに匹敵する企業を10年間で10社創出する」と目標を掲げた。ユニコーンとは「評価額が10億㌦以上で、設立10年以内の非上場企業」を指す。米国にはたくさんいるという。
 さて、いま、県内に企業価値が1000億円を超える企業は何社あるのか、会社四季報によると5月時点でわずか9社にとどまる。マツダ、中国電力、エフピコ、イズミ、ひろぎんホールディングス、福山通運、中電工と広島を代表する有力企業が名を連ね、そこに半導体製造装置のローツェ(福山市、評価額1758億円)、太陽光発電最大手のウエストホールディングス(西区楠木町、同1394億円)の2社が食い込む。
 ウエストHDは脱炭素化の世界的な流れを追い風に、太陽光発電を中心とした再生可能エネルギーで業界の先頭を走る。吉川隆会長(73)が1981年に創業。建材卸、瓦事業、戸建て事業、リノベーション、戸建て向け太陽光発電、メガソーラー事業などに遷移させながら企業価値を高めてきた。吉川会長は、
「新事業の糸口はビジネスにはらむ矛盾の中にある。供給者視点でなく、利用者目線に立つと不透明なことは多い。そこにメスを入れてきた」
 例えば瓦事業。従来は坪単価だけで金額を見積もる商習慣があったが、同社は使う製品や部材ごとに価格を明確化し、市場を切り開いた。
「本来は目的を達成するための方法(手段)なのに、それが逆転し方法が目的化することがある。方法は限りなく存在し、そこに変化を促していく。失敗することよりも、変化を恐れてやらないことのほうが問題だ」
 会長自らまとめた社員向けの小冊子「あなたをあきらめない。」に変化を創造する大切さを述べる。
「企業は社員一人一人が向上心を忘れたその時から衰退が始まる。好調の時ほど、何かを達成した時ほど、衰退に向かう最大の危機です。これは企業だけではなく個人も同じです。良い状態になったら、そこに満足し保身に走らず、新しい目標に挑戦していくことが大切。いい状態になったらそこでいったん断ち切って見直してみる。そこから素早く次の行動に移る。これが変化を創造する秘訣ではないでしょうか」(抜粋)
 2004年に株式公開を果たし、現在の連結社員数は約500人。一般的に組織が大きくなると〝大企業病〟に陥る弊害がつきまとう。
「企業の成長とともに安心感を抱くようになる。それが安易な考えや気配りの欠如、積極性の喪失につながっていないだろうか。大きい船だからといって沈没しないわけではない。船は大きくなると小回りが利かず、急な危険を回避することが困難になる。これは企業も同じことです」
 山あり谷あり。体験に裏打ちされた企業経営の鉄則を分かりやすく、人生の指針も優しく語り掛ける。
 12月1日に陸上風力発電への参入を発表するなど、攻めの姿勢を貫く。わが社は穴ぼこだらけ。完璧でないからこそ頑張れる。いつも発展途上だが、超える壁が大きいほど仕事は面白いと言う。

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