地球が沸騰する時代が到来する。少々過激なフレーズに思えるが、国連のグテーレス事務総長が危機感を訴えた。これから地球はどうなっていくのか、多発する自然災害や異常気象が一人一人に警告を突きつけてきた。
岸田首相は、昨年11月末〜12月13日にドバイであった「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)」や「世界気候行動サミット」に臨み、経済全体での温室効果ガス削減目標を設定するほか、25年までに世界全体の排出量ピークアウトを実現する必要性をアピールした。
日本で脱炭素と経済成長、産業競争力の強化を両立させるためには、何と10年間で150兆円を超える官民のグリーントランスフォーメーション(GX)投資が必要という。今年2月ごろに「GX経済移行債」(10年間で20兆円規模)を発行するほか、24年度には地域脱炭素交付金を大幅増額する予定など、さまざまな施策が動き出す。
マツダは35年に国内外の自社工場でカーボンニュートラル(CN)を実現する目標を掲げる。まずはCO2排出量全体の75%を占める国内拠点で集中的に推進し、モデルケースとして海外拠点へ広げる考えだ。30年度にはCO2排出量を13年度比で69%削減する。22年度で国内の主要な生産4拠点のCO2総排出量を同33.4%(37万1000㌧)減らした。さらにその倍を削減する道のりは険しい。向井武司専務は、
「つくる、はこぶ、つかう、もどすといった、それぞれの過程でCO2排出量を減らし、ロードマップを着実に進める。豊かで美しい地球と永続的に共存できる未来を目指し、50年にはサプライチェーン全体でCNを実現したい」
三本柱で具体的な取り組みを定めた。一つは省エネ。CO2排出量の抑制と同時にコスト削減につながる投資を行い、CNと事業成長を両立していく。照明のLED化、空調機器の高効率化、シミュレーション技術を用いた省エネ方法などを予定。従来に比べて低い温度で塗装できるよう技術革新も図る。
二つ目は再生可能エネルギーの導入。関連会社が宇品工場で運営する発電設備の燃料を石炭からアンモニア燃料専用に転換する。四国電力や三菱商事などと協力し、香川県のターミナルから内航船で同工場までアンモニアを輸送する仕組みを構想している。コーポレートPPA(再エネ購入契約)なども活用し、30年度時点での非化石電気の使用率を75%に引き上げる。
三つ目にCN燃料の導入を挙げ、社内輸送などで使う車両の燃料を軽油から次世代バイオ燃料などに切り替える。森林保全などのJ‐クレジットも活用する。カーボンニュートラル・資源循環戦略部の木下浩志部長は、
「購買本部が関わり、サプライヤーなど約70社のロードマップ作成を進めている。それぞれの特性を踏まえた取り組みを検討するとともに、当社社員の派遣や技術サポートなどを通じて成功事例を水平展開していく。コーポレートPPAにも加わってもらい、枠組みを広げたい。一歩ずつ進めていく」
本気度が伝わってくる。若者の車離れにブレーキをかける狙いもあるのだろう。将来の消費行動の中核を担う「Z世代」は環境問題への意識が高く、CNに取り組む企業姿勢にも鋭い視線を向ける。車メーカーにとって企業の生存がかかっている。