広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2024年4月11日号
わくわく大作戦

「わくわく大作戦」とネーミングされた部署横断プロジェクト。何かと堅い企業イメージが先行する中国電力グループの一員で、塗装や建築工事を手掛ける中電工業(南区出汐)が一転、イメージを突き破る大胆な作戦を打ち出し、周囲を驚かせている。
 2021年から始めた。建築・塗装をイメージした「ビルダイン」と「ペイントン」の公式キャラクターを登場させたほか、塗装工事の協力会社組織「電栄会」各社の武将キャラクターが先陣を競う。就活生向けに、工事監督者をオーケストラの「指揮者」になぞらえたリクルートページや、全ページに現役社員が登場する若者向け雑誌のような採用パンフレットを作成し、一気に勝負に出た。
 むろん働き方も改革。コアタイムのないスーパーフレックスタイム勤務制度ほか、現場写真データの管理などにITを駆使し、業務効率化を推し進める。21年6月に就任した石井浩一社長は、
「3カ月後全員へ作戦開始を宣言した。当初の18人から次第に輪を広げ、いまでは11チーム延べ130人弱がプロジェクトに関わる。成果もさることながら作戦を実行に移していく過程での社員の成長、そしてわくわく感から生まれる一体感こそ一番の目的だ。コミュニケーションが円滑になり、安全やコンプライアンスを守る意識も自然と高くなってくる。過去3年、新卒者で離職した人はいない」
 90日で目標達成
 全国で初めて、ドローンを使った鉄塔塗装資材の運搬に成功。昨年12月にはワクワクやクリエーティブをキーワードにオフィスのリノベーションを行うなど、矢継ぎ早にプロジェクトを実行した。勢いよくスタートしたが、次第に失速する事例は枚挙にいとまがないが、同社の作戦が次々成果を挙げるのはなぜか。
 経営コンサルのニューチャーネットワークス(東京)の高橋透社長をアドバイザーに加え、プロジェクトのゴールを90日に設定する、BTP(ブレークスループロジェクト)という考え方を採用。3年の中期計画や年間計画などを90日という短期のゴールに置き換える。週、日単位の具体的なアクションが見えると全力投球しやすくなり目標を細かく区切ることで、その都度に成功体験を味わえる。さらに行動量と質が高まり、成功が加速する案配だ。
 各チームの活動開始時は高橋社長を交え、キックオフミーティングを開く。リーダーはビジョンと目標を面白そうなストーリーに仕立てメンバーに伝え、全員が最終結果に責任を持てるようにする。必ず達成する状況をつくるためメンバーはみんなの前で宣言・約束し経営層への中間報告や90日後の最終報告日時を設定。毎日の達成状況を公表し、社内のさまざまな人からコメントをもらうことで、実行を習慣化している。
 石井社長は、
「オフィスリノベーションではメンバーたちがこんなところで働きたいと思う空間を自ら設計。20以上のブースを設け、より創造的な働き方ができるオフィスが実現した。お客さまからも社員の笑顔や会話から、生き生きした空気が感じられると、うれしい言葉を頂く。みんなが新しい事に挑戦する楽しさ、一緒に困難を乗り越えるわくわく感を体感してくれていると思う」
 社外とワクワク共有へ「DESHIO(デシオ)いいでしょプロジェクト」を始める計画だ。

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