広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2024年9月19日号
評価は自分が創る

先の読めない事業環境や余剰雇用、人手不足にさらされて苦心惨憺。人材確保へ適切な給与体系をどうすればよいのか、正解のないもどかしさを味わった経営者も多いのではなかろうか。
 軽自動車専門店のサコダ車輌(佐伯区五日市町)は、今9月期決算で販売台数6000台乗せと車検2万台、一般修理5万台以上を見込む。トライ&エラーを重ねながら独自の評価と給与制度を構築。働く人のモチベーションを高め、成果を挙げている。
 2015年に評価制度の検討を始め、20年に修正を加えて翌年に現行制度をスタート。10月から抜本的な変更(賃金テーブル、職能手当、資格手当、年間休日)を予定している。月約10項目の個人評価基準の達成度合いに応じて半期毎に等級を改定。執行役員本部長で整備部門統括責任者の森岡真也さん(40)は、
「営業や整備部門などの職務を問わず、全社員が評価項目を理解して納得感のある給与体系、評価制度に進化させています。近年は販売だけ、整備だけと部門限定で成果を出し、採算を取ることは難しくなっている。シナジーが発揮できる事業を展開することで専門性とスピードを高め、よりユーザーのメリットに貢献する社内態勢を築く。事業の枠を超えて相互理解できる人材の育成が大切だと思う」
 むろん専門医も必要だが総合診療医によって、適切な対応が可能になる。〝自動車販売知識のある整備士〟が企業力を底上げし、技術と営業の総合力を備えた人材こそ顧客の信頼につながるという。
 森岡さんは整備学校を卒業してメーカー系ディーラーに勤務。自動車整備士に誇りを持っていたが、業務量は営業担当の腕次第。業界の人手不足でプライベートな時間がなかなか確保できない、将来へ希望が見いだせないと、いったんは業界を離れた。
 縁あってサコダ車輌に入社以降は、整備士が主体的に活躍できる環境をつくりたい一心で課題を洗い出し、新たな職場づくりを目指した。
 人材育成を成長戦略の真ん中に置く迫田宏治社長は働く人への投資を惜しまない。
「生活必需品として軽自動車を扱っている。そうそう頻繁に車は買い換えられるものではない。どうすれば価格を抑えることができるのか。販売台数を増やし、経営効率を高める努力が欠かせない。しかし売りっぱなしは厳禁。安心していただけるアフターメンテナンスを整えてきた。業界は整備士や板金塗装などの人材不足が年々深刻さを増している。社員一人一人と向き合い、人材が育つ雇用関係をつくり、みんなが生き生きと働く職場を実現させたい」
 採用は中途を含め毎年15〜20人を計画。国家資格の整備士は3級、2級を取得し、自動車検査員として活躍できるまで最短でも約8年かかるが、教育プログラムを充実させて無資格でも採用。独自のカリキュラムとスキルマップを基にした社員等級制度の運用で、将来をイメージできる成長プロセスを〝見える化〟した。どんな力を身に付けると一人前なのか基準が明確。その人の〝頑張り方〟がひと目で分かる。26年からはジョブ型採用に踏み切る。 
 部門を超えて異動できる人事制度を整える。外国人材もベトナム人の特定技能1号3人、技能実習生4人が活躍する。舟入・五日市・東広島・祇園・海田の5指定6工場体制。評価は自分で創る。その評価は業績に直結する。

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