広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2024年10月17日号
地域の食材が一番

そんなんあるん、知らんかった、とは言わせない。広島県の総力で地域の魅力を全国へ、世界へ。県産食材や地域に根付く食文化を広め、次代へつなぐプロジェクト「おいしい!広島」が10月2日、キックオフした。広島を元気にする熱い思いを込め、さまざまなイベントを展開する。 
 生産者の高齢化や担い手不足のほか、気候変動による食卓に届く農水産物の変化などに向き合ってきた県農林水産局が中心となって、昨年のG7サミットを契機にプロジェクトを立ち上げた。
 まずは県内14市9町に根付く食の魅力を磨き上げることから始めた。そして生産者や飲食店、ステークホルダーに県民も総出で地域の魅力を発信し消費の輪を広げていく。誇りと自信を持った生産者を増やし、新たな商品やサービスも生み出しながら好循環させていく狙いだ。
 生産者の実情を知る同局販売・連携推進課の諫山俊之課長は、
「広島が世界中から注目されるG7開催の前と後、国内外から多くの観光客が訪れる。県産品をアピールする絶好の機会を逃す手はない。初めて広島を訪れる人にも県産の農水産物を手に取ってもらいたい。飲食店を巻き込みながら昨年2月に立ち上げたプロジェクトを起点に広島の食の魅力を売り出す」
 食材として食品スーパーなどで買い求めるだけでなく、商工労働局とも連携してプロの料理人の手で新たな〝おいしい〟を生み出しながら、地域それぞれの魅力を地域の人に〝推し〟てもらう。
 広島の耕作地は急傾斜地が多く、作業効率はあまり良くない。農林業センサス(2020年)によると耕地面積や販売額などが規定以上の農業経営体は10年前に比べ38%減の2万2290。うち個人の自営農業者も減少をたどり2万人超。65歳以上が83%を占め、平均年齢72.1歳。
 耕地面積は20%減の2万8979ヘクタール、しかも規模別で1ヘクタール未満と1〜5ヘクタールの面積が全体の60%以上。23年度の漁業経営体は10年前に比べて23%減の1945。就業者数は33%減の2672人。一方で、カキ類養殖の経営体は8%減の286に対し、養殖面積は平均で34%増の8603平方メートル。総面積は246万平方メートルと全国一を誇る。農業、漁業共に一経営体の規模は次第に大きくなる傾向を見せる。
 このプロジェクトは〝おいしい〟が県民の誇りになり、広島のブランドイメージを醸成し高めていく。県内外から多くの人が集まり、交流人口を拡大、地域の経済活性化をもくろむ。キックオフ当日、瀬戸内のさかな、広島の酒、広島和牛など地域色豊かな食材に、飲食店や企業が三者三様に工夫を凝らし、新たな市場を生み出そうと虎視眈々。
 〝おいしい〟でつながり、地域に元気をもたらす。湯﨑英彦知事は、その旗振りを県民一人一人が担ってほしいと訴えた。地元では当たり前にあるものが誰かの推しになり伝わり、いつの間にか価値が高まり、みんなが潤う。長年ホテル業界で活躍し、11年に「現代の匠」に認定された全日本司厨士協会中国地方本部県本部の澤村収二会長は、
「収穫してすぐに調理して食べる。これが一番おいしい。家庭菜園を楽しんでいるが農家のプロにはかなわない」
 地域の食材が一番。これに調理の技が重なり、地域の応援が欠かせないと言う。おいしい広島ブランド、人を呼び込み国内外へ飛び立て。

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