1955年に財界グループ「二葉会」が発足した。わしらでやろうやないか。企業トップの発言をきっかけに広島の有力企業10社(後に11社)が結束。廃墟となった広島を復興させようという経済人の気概にあふれていた。利害得失を離れてまちづくり、経済を引っ張り、いかんなく存在感を発揮した時代だった。
二葉会メンバーのうち、御三家と称されるマツダ、中国電力、ひろぎんホールディングスが5月、県とタッグを組んだ。転出超過の解消を目指すプロジェクト「HATA ful(はたフル)」をスタート。社員と職員40人が中心となり、広島出身の県外大学生へのヒアリングなどを通じて、なぜ広島が選ばれないのか探った。検討を重ね、理想の姿を描く。これから広島が「働く場所」として一層魅力的になるよう、さまざまな取り組みを始める。
出向や兼業で各社のプロジェクトや業務を相互にこなす「キャリアチャレンジ」のほか、学生にもプロジェクトに参加してもらいながらキャリア形成を促す「インターン」などによって、チャレンジ機会の創出や企業のイメージアップを図る。企業規模を問わず来春から参加者を募り、初年度に10件30人、3年で100人のマッチングが目標。月1回の合同ワーケーションのほか、相互の定期的な職場点検で風土改革を促す。
9月の発表会にそれぞれの組織のトップが来場。一部紹介すると、
『転出超過の主な理由はUIターン採用の減少と県外転職の増加。県内で多く採用する企業こそが取り組むべき課題ではないか。はたフルの名称には地域の旗振り役となる、カラフルで魅力的な〝はたらく〟を創出する企業ネットワークという意味を込めた。私たち大人が広島で生き生きと暮らす姿を子どもに見せて、将来に希望を持ってもらう。人材交流プラットフォームなどで組織の枠を超えて人がつながり、誰もが自分らしく働ける魅力的な職場を広島で増やしていく』
と心意気を見せる。湯崎英彦県知事は、
「これまでも多くの対策を行い、モデル事例を共有してきたが、企業の枠を飛び超える画期的な試みだ。二葉会が復興を支えた歴史など、地域密着が広島の良いところ。県民が最大限に力を発揮し幸せになることは企業を強くしていく。まさに地域活性化の原動力となり、魅力的な広島の姿を見て人が集まってくる。そんな好循環を目指す」
マツダの毛籠勝弘社長は、
「金と物は有限だが、人には無限の可能性がある。企業の底力は一人一人がどれだけ活躍できるかに懸かっている。仲間をつくり、同じ課題に向けて一歩踏み出したことで、広島を変えるエネルギーが生まれたと思う」
ひろぎんホールディングスの部谷俊雄社長は、
「企業風土の変革は一朝一夕にはいかない。1社だけでうまくいくかというと難しく、この活動を機に協力しながら加速させたい」
中国電力の中川賢剛社長は、
「実は転職サイトで、おそるおそる中国電力と入力することがある。はたフルの熱意を聞き、魅力的な会社には自己実現や働きがいにつながる職場環境が必須だと改めて肝に銘じた。広島には地元プロスポーツをみんなで応援する気風がある。企業も応援し高め合いたい」
活動の輪が広がり、活気あふれる広島を願いたい。