米国大統領選でトランプ前大統領が圧勝し、4年ぶりに返り咲く。ジョーカーのように過激な発言で市場経済を翻弄し、為替や株価に影響を与えてきた。2期目も「米国第一主義」を推進する可能性が高いという。円安で潤った日本の輸出企業は内需の取り込みなど足元から見直しを迫られる局面が出てきそうだ。
マツダは前3月期に北米をはじめとする海外で販売台数を伸ばし、売り上げ4兆8277億円、純利益2077億円と共に過去最高を計上。一方、国内はコロナ禍以降に低迷している。2019年度まで20万台以上を売ったが20〜23年度は約15〜17万台と落ち込み、今期も15万台を予想するなど厳しい。
全般に国内の自動車市場はコロナ禍前の水準まで回復しきっていないが、SUV分野は伸び続けている。特に500万円台と600万円台の増加率が大きく、ここに狙いを定めた。
10月に3列シートSUV「CX‐80」を発売。比較的車体の大きな「ラージ商品」というシリーズで、国内ラインアップの最上級に位置付ける。車両価格は旧型よりも60万円ほど高い約390〜710万円に設定。月販目標1400台。毛籠勝弘社長は、
「もともと22年9月発売のCX‐60を国内販売のカンフル剤にする計画だったが、品質トラブルでつまずいた。月販目標2000台に対して今年は600〜900台で推移するなど低調。同じ失敗がないようユーザー、販売店、ジャーナリストなど多方面から意見を聞き、徹底的に問題点をつぶしてきた。発売が延び、国内販売の回復が遅れてしまったが、万全の状態で世に出せて良かった。国産唯一の3列シートSUVで乗り心地、走行性能、意匠のいずれも最高の出来栄えだと自負している。CX‐60にも改善策を生かしており、挽回していく。ラージ商品全体をじっくりと定番品に育てたい」
今期の世界販売は全体で前年比9%増の135万台を計画し、うちラージ商品4車種で20万台をもくろむ。
「ラージ商品は他の車種と比べ2倍の利益率があり、今後の開発費の原資を稼ぐための貴重な手段になる。特にEV専用車種には巨額のコストが予想される。他社との協業を強化する一方、マツダらしい走りを重視した独自のEVを生み出したい。脱炭素に向けてハイブリッド(HV)など多彩な選択肢を用意し、充電インフラやエネルギー事情にかなった車を提供していく」
新型車は車両の骨格などの面でEVを想定しておらず、2.5L直列4気筒ガソリンエンジンのプラグインHV、3.3L直列6気筒ディーゼルエンジンと同マイルドHVの三つ。減速時にエンジンとの接続を切り離すことで、回生エネルギー(タイヤの回転による発電)の無駄をなくすなど工夫を凝らす。
運転手の意識消失などの異常をAIが判断し、警報を出しながら自動で減速停止する機能も搭載。R&D戦略企画本部の栃岡孝宏主査は、
「40年をめどに当社の新車が原因となる死亡事故ゼロを目指す。自ら運転する高齢者は認知症や要介護認定のリスクが低いというデータがある。完全自動運転では同じ結果にならないと思う。当社の自動運転技術は、あくまでも運転する楽しみのサポートがコンセプト。何歳になっても安全安心に自信を持って外出できるよう力を尽くす」
新たな挑戦が始まった。