アマゾンなど通販の急速な普及で運送会社の仕事はどんどん増え、人手が足りずにてんてこ舞い。不在時の再配達が頻発し、その日の仕事がいつまでも終わらない。4月にトラック運転手の残業規制が始まった2024年問題の影響から、事態は一層深刻になってきたという。
帝国データバンクの24年度上半期の全国倒産集計によると運輸・通信業は前年同期比14・7%増の249件。同様に残業規制の始まった建設業も深刻で、人手不足が原因となった倒産は両部門が全業種の半数近くを占める。配送網を維持するためには荷主を巻き込んだ業務効率化、運賃と賃金の引き上げ、働く環境の改善などを通じて、運転手の確保が欠かせない。
これを問題視した国土交通省は11月1日、適正な取引をさまたげる疑いのある荷主や元請事業者に是正を働き掛ける調査員「トラック・物流Gメン」を2倍強の約360人に拡充した。中国地方では昨年7月から1133カ所をパトロールし、悪質な34件を指導した。
物流業が生き残るために何が必要か。荷主から選ばれる組織づくりに力を注ぐKUBOXT(クボックス、西区)の久保満社長(65)は、
「住宅資材を運んだ後のパネルつり設置やユニットハウスの組み立てなど、物を運ぶ前後の〝物流プラスアルファ〟を徹底している。働き方改革関連法を受け、やむなく運賃値上げなどをお願いした。不安もあったが荷主からは、社員がしっかりとした会社なので今後も頼む。社員の教育費が運賃に入っていると考えれば納得できる、など多くの言葉を頂戴し感謝に堪えない。社員の頑張りや人柄の良さが当社の営業力に大きく貢献していると実感できた。誇れるものだと自負している。ほぼ全てが直接取引であり、そうして築いてきた長年の信頼関係こそ、全ての商いに通じる原点だと思う」
運転手が休めるよう全拠点に寝室を置く。労働時間を把握するアプリや新型デジタルタコメーター、車両の現在位置や運行状況の管理システムなどを導入した。事故防止を徹底し、社員が高いモチベーションで安全に働ける環境の整備に余念がない。健康経営に取り組み、経済産業省から優良法人に認定された。
「いかに人材を獲得し、やりがいを感じて働いてもらえるか。人事企画部を設けて人的資本経営を進め、社員の成長意欲を掘り起こし、活躍できる人材を育成していく。仕事の幅を広げる機会や学びの場を増やす。例えば、管理者やマネージャーには自分が抱える業務だけではなく、経営者と同じ目線で人材育成に取り組むマネジメント能力を磨いてもらうため、専用の研修をスタート。人材の力を最大限に引き出し、そこまでやってくれるのかと思われるサービスを追求する」
61期を迎えた。売り上げは15〜17億円で堅調に推移する。社会貢献も意識し、拠点を置く岡山市、岐阜県の大野町と協定して被災者へ救援物資を運ぶ緊急車両の燃料供給を担う。施設は避難所として提供する。
創業した両親を立て続けに亡くした。いまも創業者精神「四つの答え」を大事にしている。経営理念の一番目に「社員の幸せの実現」を掲げ、そのために「物事にはすべて基本がある。基本を忘れるな」「世のため、ひとのため」「誠を尽くせ」「みんな仲良く」(切磋琢磨)と心を込める。