広島経済レポート|広島の経営者・企業向けビジネス週刊誌|発行:広島経済研究所

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コラム― COLUMN ―

2025年12月18日号
武家茶道とカフェ

今週号で2025年の最終号。ほぼ時を重ね県政、広島商工会議所のリーダーが新旧交代し、街中では新駅ビル・ミナモアの開業が話題を振りまいたほか、紙屋町・八丁堀エリアの再開発事業は高層複合ビル・カミハチクロスが27年開業へ向け動き出した。カープはさておき、今年は何があったかと思い浮かべる年の瀬を迎える。
 やはり城によく似合う。3月末に広島城三の丸整備等事業として、第1期商業施設が共用開始し開放的な和風建築に5店が軒を連ねる。その一つ。抹茶やスイーツを楽しみながら武家文化、茶道の美意識などに触れることができる「SOKOCAFE(ソウコカフェ)」は浅野家の家老を務め、400年以上にわたり武家茶道を伝える上田宗箇流が初めて監修した。城へ戻り、カジュアルなカフェスタイルを採用。変えてはならないものと変えなくてはならない不易流行を体現する。果たして流祖の宗箇さんがどう受け止めただろうか。
 17代目を継ぐ若宗匠の宗篁さん(47)は、
「2年程前に提案を受け、思いを巡らした。カフェの気軽さと、崩してはならない茶道の品格をいかにバランス良く折り合いをつけるのか、これからも問い続けていくテーマだと思う。25年前に茶道人口は600万人。いまは180万人に減り、茶の湯の魅力を伝えていく工夫も大切。できるだけ多くの人にオープンな雰囲気で気軽に茶の湯に親しんでもらえる機会にしたいと考えました」
 店内は床の間や釣釜、宗箇の時代から伝わる練り香も線香仕立てにするなど工夫。家元好の抹茶を、伝来の黒織部釘抜文茶碗や、上田家茶事預りの12代野村餘休作と10代祖休作の御庭焼茶碗のデザインを再構築した新作茶碗でもてなす。
 かつては上田家の屋敷があった城内で家紋のあるカフェが伝統文化を醸し、若い人や外国人観光客に人気という。
「カフェを通して地元の伝統文化を掘り起こし、新たな価値を生み出す。そして、世の中の動き、空気を感じ取る機会になる。外国人の表情にも興味津々。改めて考えさせられます」
 被爆を免れた古文書を掘り起こし宗箇の武勲と茶の湯の関係をひもとくなど、広島の武家文化を体系化。どんな企画ができるか構想を巡らす。
 カフェを運営するCOCON(中区)の神尾正博社長は、
「27年春に2期エリアの三の丸歴史館が供用開始する予定。文化と歴史が織り成すスペースとして厚みを増す。カフェが歴史をたどる憩いの場になり、思いをはせるひとときを楽しんでいたきたい」
 いま世界が日本文化に関心を寄せている。都心のオープンな空間で広島の歴史や文化に触れることができる試みは街に元気を呼び込む大きなヒントになりそう。
 江戸期の書院屋敷、茶寮を廊橋でつなぐ構成を再現した西区古江東町の上田家上屋敷は過去に国内外から多くの賓客を迎えた。宗篁さんは新たなチャレンジにも余念がない。ライブ配信によるウェブセミナーや動画も手掛け、今月28日は稽古場のあるNY、独、仏を同時に結び5回目となるライブ配信も計画。
「上田家に関する古文書を調査している。戦国を生き抜いた宗箇が何を語るのかDXで何かできないか考えている」
 伝統文化の継承も時代とともに変遷し、新たな光を放つ奇貨としたい。

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