大学経営が転換期を迎えている。2018年度の大学・短大進学率(全国)が過去最高の57.9%だった半面、現役進学者の人数自体は前年度比7163人減の58万1958人となり、4年ぶりにマイナスに転じた。18歳人口が減り続ける中、多くの大学が生き残りを懸けた対策を急ぐ。
広島経済大学は13年度から入試・カリキュラムの抜本改革に乗り出した。入試の合格点を引き上げ、基準に達しない学生は定員に満たなくても不合格にした。同年度の入学者数を直前の12年度から約120人減らす荒療治だったが、効果はてきめん。その後志願者数は上昇カーブに転じ、19年度入試は4年連続増の3915人。ただし、安易に入学者を増やさないという基本方針はそのまま貫く。石田恒夫理事長は、
「優秀で意欲ある学生が一層集まるようになった。以前は〝滑り止めで受ける大学〟という不本意な評価をされることもあったが、軽い気持ちで臨んだ受験生が軒並み不合格になり、高校の先生方もびっくりされたと思う。徐々に当校を見る目が変わり、18年度は大学ランキングの一つ『高校からの評価』で県内私立大学のトップに。私どもの本気度が伝わったのだと思う」
学生数が収入に直結し、どの大学も定員確保を目標に定める。同大の18年5月現在の定員充足率は85.9%にとどまり、入試改革によって約15%の収入を切り捨てたことになる。痛みを伴う改革を断行した胆力はすごい。しばらく台所事情は苦しいだろうが、目先の利を追わず、これから先を見据えたブランド価値の向上を狙う。
併せてカリキュラム改革などを徹底。教職員一丸で「学生と向き合い育てる」方針を明確にした。次第に企業からの評価も高まり、18年3月末卒業者の就職率は前年比1.3ポイント増の99.2%だった。地元の有力企業や金融機関へも多く輩出する。
「長年にわたり、斬新な発想やチャレンジ精神を備え、仲間と協働してゼロから何かを成し遂げられる人材の育成プログラムに力を入れてきた。学生が自主的に企画した、年間約20件のプロジェクトに補助している。こうした活動を促すため、16年12月に約48億円を投じ、学生のアクティブ・ラーニング専用施設『明徳館』を完成した。10階建て延べ約1万1600平方メートルと国内最大級。オープンな造りで授業の空き時間などに学生が集い、互いに刺激を受け、コミュニケーションに役立つ効果が生まれていると思う」
4月には従来の経済学部に経営学部とメディアビジネス学部を加え、3学部5学科の社会科学系総合大学に発展改組する。
「高校生から見ても興味のある学部を選びやすくなる。時代とともにスピーディーな変革を遂げたい。開学から50年以上がたち、卒業生は累計3万6000人を超える。卒業生が地元企業の経営者になり活躍する姿を多く目にするようになった。同窓会活動も盛ん。これからも社会や企業に求められる人材を送り続けることが、われわれの大きな使命と考えています」
大学の真価とは何か。大学経営の転換期にひるむことなく、抜本改革を断行した取り組みが、将来、どんな実を結ぶだろうか。